土曜日は母親の退院祝い*1を兼ねて、先ずはイクスピアリ*2のAlan Wong's Hawaii*3で昼食。ハワイ料理といっても、ヨーロッパ料理をベースに、日本料理、中華料理、それから朝鮮料理*4がフュージョンされている感じ。Alan Wongは姓からもわかるように華人だが、母親は日系人で、さらに布哇原住民の血も受け継いでいるという。私は(バラク・オバマお気に入りという)鱸のジンジャー・コートを食べる。また、前菜のカリフォルニア・ロールは非常好。それから、Cirque du SoleilのZEDを観る。2007年に上海でQuidamが半年間上演されたことがあったが、観てはいなかった。ZEDは天と地の融合というコスモロジカルなテーマと主人公の成熟というテーマが組み合わさった、或る種定番的な筋なのだが、Cirque du Soleilのパフォーマーたちの身体表現の素晴らしさはいうまでもない。勿論、クライマックスは空中ブランコで決めるというサーカスの定石も踏まえている*5。また、Rene Dupereによる音楽も素晴らしく、サントラのCDを買わなかったことを後悔する。
因みに、母親は一時はもう一生歩くことができないのではないかとも思ったが、リハビリテーションの甲斐もあって、取り敢えず歩くことができる。
帰宅してから、NHKのBSで電気グルーヴ結成20周年記念番組を視る。
それから、侯孝賢*6の『百年恋歌(最好的時光/Three Times)』*7。舒淇と張震の2人が1966年、1911年、2005年という3つの時代(three times)の恋愛を演じるオムニバス映画。エピソードのタイトルはそれぞれ、「恋愛夢」、「自由夢」、「青春夢」。「恋愛夢」は兵役前にビリヤード場の女と知り合った少年が入営して初めての休暇に彼女を訪ねるというほのぼのとしたラヴ・ストーリー。訪ねたけれど女は他の町へと転居していて、またその町を訪ねても女は別の町に転居していた、という繰り返しが笑える。BGMとして昔のポップスが沢山(ストーリーに本質的に関係する仕方で)引用されるが、これだけでも特に台湾の観客のノスタルジーを目一杯刺戟したのではないか。これは3つのエピソードでは、その時代的背景もあって、『恋恋風塵』や『童年往事』といった侯孝賢の初期作品の雰囲気に最も近いといえる。ただ、張震が初めて徴兵される少年としてはちょっと歳を取りすぎということもいえるだろう。『呉清源』でも、『ブエノスアイレス』や『グリーン・デスティニー』の時からの張震の成熟ぶりに吃驚したということはあったのだが*8。1911年を舞台とした「自由夢」は、梁啓超を支持する士大夫階級に属する男と遊女の恋物語。男は女を身請けして妾にすることを拒み、その代わり女の妹の身請けを援助し、梁啓超の運動に合流するために日本内地に旅立つ。ここでは、女男というジェンダー的な対立から、恋愛/革命(公事)、ローカル(台湾)/ナショナル(中国)といった対立が喚起される。このエピソードでは台詞は生の声ではなく字幕で表示される。「青春夢」では2人は、写真家とロック・シンガーを演じる。ロック・シンガーは実はバイセクシュアルで、女性の恋人がさらにいたが、恋人は或る悲劇的な仕方で三角関係を清算する。3エピソードを通じて、コントラストの強い画面、それを通じての、光/影、外/内のコントラストの強調が印象的。また、どのエピソードでも、手紙やE-Mailといった書き言葉による(或る意味で間接的な)コミュニケーションが重要な役割を与えられている。その極が「自由夢」のサイレント化、字幕による台詞の提示なのであろう。
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See also
http://latifa.blog10.fc2.com/blog-entry-390.html
http://blog.livedoor.jp/rabiovsky/archives/50907443.html
*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090819/1250656928
*3:http://www.ikspiari.co.jp/alanwongs/
*4:妻が食べたのは、ビーフ・リブのコチジャン・ソースだった。
*5:これにオートバイの樽乗りが加わればいうまでもないが。
*6:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060811/1155303401ここで引用した『ガーディアン』の記事(http://arts.guardian.co.uk/print/0,,329545123-110428,00.html)にThree Timesへの言及あり。