「ロリコン」から「四十八歳の抵抗」

目白雑録 (朝日文庫 か 30-2)

目白雑録 (朝日文庫 か 30-2)

またまた金井美恵子『目白雑録』*1からの抜き書き。また、「島田雅彦」ネタ*2
「今月の馬鹿」*3。先ず、突っ込まれている島田雅彦の文章;


世の中の退廃が進めば、いわゆるロリコンの人口は増える。娘の年頃の恋人がいることを誇る親父なら、私も何人か知っている。31歳年下の弟子のような女性を後妻に迎えた大学教授、40歳も年下の恋人とプラトニックな関係を結んでいると語る評論家、どちらも幸せそうである。(p.220に引用)
それに対して、

まず、「ロリコン」というものは、ナボコフの『ロリータ』を引きあいに出す必要などまるでない言葉で、普通は笙野頼子が大塚某を執拗に攻撃する場合とか、アニメーションの宮崎駿のファンの男性などが宮崎駿も自分たちも自明にロリコンなのだ、と、いばったりする具合に使用し、ナボコフがニンフェットという言葉で定義したように十三、四歳以下、それを過ぎては資格なしの少女が、「ロリコン」の対象なのであって、三十一歳年下の弟子のような女性を後妻にむかえる大学教師を、あえてコンプレックスと名付けて呼ぶのであれば、そこは床しく秋声コンプレックス*4、とかなんとか言うほうがましで、島田の言っている大学教師が、もし仮りに某であるとすれば、これはマザコンのナルシストと言われこそすれ、ロリコンじゃあるまいよ、というところだし、四十歳も年下の恋人のいる評論家というのが、仮りに某なのだとしたら、これはまあ、ロリコンというよりは老いらくの恋、というところか。それにしても、たまたま思いあたる人物について触れられているから、彼等が間違っても「ロリコン」ではあるまい、と言っているわけではなく、島田の「ロリコン」の理解は間違っているということなのだ。(p.221)
さらに、金井先生は「おそらく島田が生まれる以前には、石川達三のベスト・セラー小説のタイトルが流行語になって、娘と同じ年頃の若い女と交際する熟年男を「四十八歳の抵抗」と言ったものだったが」(p.222)と書く。かつては日本ペンクラブの会長も務めた石川達三という作家は今殆ど忘れられているんじゃないか。金井先生も「この小説をむろん読んでいない」(ibid.)というが、私も『四十八歳の抵抗』は読んでいない。

ところで、「ロリコン」ならぬ「ペドフィリア」については、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070208/1170915951とかhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070928/1190987965とかhttp://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080315/1205588068とかも参照。

*1:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081203/1228280406

*2:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20081207/1228590174

*3:これは『噂の真相』の連載コラムのタイトルに由来するらしい(p.219)。

*4:徳田秋声