(「弱者」の)動機の語彙

『産経』の記事;


知的障害者ねらい暴行、恐喝…少年グループ逮捕
2008.8.22 12:00


 知的障害者を狙い暴行や恐喝を繰り返したなどとして、警視庁少年事件課と青梅署は、いずれも東京都青梅市の無職少年(16)や中学3年の少年(14)ら14〜16歳の少年8人を逮捕、13歳の少年を児童相談所に送致した。

 調べでは、少年らは今年1月12日午後1時ごろから約1時間にわたり、たまたま道で出会った青梅市の知的障害の男性(20)に、「タイマンしろ」などと因縁をつけ、顔や腹を殴るなど暴行を加えた上、バッグから現金8万円を盗んだ疑い。少年らはその後も男性を呼び出し、通報しようとした携帯電話を強奪したり、「返してほしかったら1万円持ってこい」などとうそを言い、1万円をだまし取ったりした疑い。さらに5月31日にも、6時間以上にわたり、別の知的障害を持つ少年(15)の頭をギターで殴るなどの暴行を加えた疑い。

 少年らは木の棒をマイクに見立て、暴行の様子を実況中継。殴られた男性に「痛いですか?」などと“インタビュー”していた。また、男性が警察に被害を訴え出ないよう、男性に「猫パンチ」と呼ばれる弱いパンチで自分たちを殴らせ、「お前も一緒だ」などと脅していた。

 脅し取った現金は健康ランドやゲーム代などに使っていた。

 中学3年の少年は、「自分より弱そうな相手を選んだ」と容疑を認めているが、「障害者をいじめて何が悪い」と反省の態度はないという。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/080822/crm0808221209007-n1.htm

昨年起こった「「ゴミ掃除」と称して、公園で寝ていた男性にライターオイルを使って火を付け、大やけどを負わせた」という東京の高校生、所謂「「掃除」少年たち」*1を思い出した。こいつらも、「怒ったホームレスが追いかけてくるのが面白かった。彼らは人間として最低で、死んでも関係ないと思った」といっていた。上の記事の最後には、「中学3年の少年は、「自分より弱そうな相手を選んだ」と容疑を認めているが、「障害者をいじめて何が悪い」と反省の態度はないという」。「自分より弱そうな相手を選んだ」とは明け透けな功利的動機だとは思うが、「障害者をいじめて何が悪い」というのを本当の動機かどうかを問うのはあまり意味がないだろう。以前にも記したように、〈動機の語彙〉として「障害者をいじめて何が悪い」というのがこの社会の中に転がっており、このガキどもはそれを引用したと言えるかも知れない。その意味では、「この少年たちと同じようなこと考えてる人は大勢いるんじゃないかな、ガキじゃないから言わないだけで」*2というのは首肯できる。また、皮肉なことに、このガキたちを糾弾する人たちもまた似たような〈動機の語彙〉を共有しているということからも明らかだろう*3
「弱者」(「否定によってのみ生き長らえることができる存在」*4としての)は怖いわねという結論になりそうなのだが、そういっているこっちもそうした「弱者」になるのかも知れず、或いは既になっているかも知れないということはある。