フェリー、北へなど - Living, Loving, Thinking, Again

アーティスト: ロキシー・ミュージック
出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
発売日: 2001/09/07
メディア: CD
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先日不図Roxy Musicの『アヴァロン』に触れたが*1、Roxy Musicというかブライアン・フェリーには一貫して〈北〉への志向がある。『アヴァロン』というタイトルにはそれがベタに反映されているわけだが。その〈北〉への志向は遅くともブライアン・フェリーの”In Your Mind”に遡るんじゃないかと思った。その歌い出しは、”Hark the frozen chimes of winter/Crystal shimmer in your mind”である*2。

In Your Mind

アーティスト: Bryan Ferry
出版社/メーカー: Virgin Records Us
発売日: 2000/03/10
メディア: CD
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一九七二―「はじまりのおわり」と「おわりのはじまり」 (文春文庫)

作者: 坪内祐三
出版社/メーカー: 文藝春秋
発売日: 2006/04
メディア: 文庫
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さて、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080617/1213671841で言及した坪内祐三『一九七二』。1972年というのは矢沢永吉やジョニー大倉がキャロルを結成した年でもある（See p.328ff.）。キャロルについては以前にもちょろっと触れたことがあるのだが*3、キャロルの音楽性ではなくファッションについて思ったことがあった。1970年代において、ロック・ファンのファッションの基本は長髪にベルボトムのジーンズであったろうけど、それに対して所謂〈ツッパリ〉*4の場合はリーゼントを基本としていた。その起源にはやはりキャロルがあるのだろう。さらに、宇崎竜童のダウンタウン・ブギウギ・バンドが採用し、クールスのような〈ツッパリ〉に人気のあったバンドもリーゼントを採用した。では、キャロルは何処からリーゼントを採用したのか。矢沢永吉たちは、ビートルズ、それも初期のハンブルグ時代のビートルズに憧れていた。そして、その時代のビートルズの髪型は当然リーゼントだった*5。さらに、当時はエルヴィス・プレスリーが歌手としてカム・バックしたということもあったし、50年代風の音とファッションをウリにしたシャ＝ナ＝ナというバンドも米国でデビューしている。しかし、キャロル・デビューの直接的な刺戟になったのは英国の「ロキシー文化」（ファッション）（p.332ff.）であるらしい。或る日、矢沢永吉がTVで『リブ・ヤング』という番組を見ていたら、「その当時、イギリスで流行っているというロキシー・ファッション」、「リーゼントに皮ジャンの若者たち」が映し出され、「ロキシー・ファッション、出演者募集」という字幕が流れ、彼は思わず応募の葉書を出してしまった（pp.334-335、『暴力青春』の孫引き）。これがキャロルがブレイクする経緯である。九谷さんがキャロルが「参照したのは「対抗文化」以前のロックンロールであったり、ドゥーワップですよね。アメリカの50年代です」と書いていたのだが*6、これは少し修正を要するだろう。1970年代初頭に「ロキシー文化」を前面に押し出してデビューしたのがブライアン・フェリーらRoxy Musicだった。Roxy Musicは当時、マーク・ボランやデヴィッド・ボウイとともに〈グラム・ロック〉として括られていた。日本の〈ツッパリ文化〉（後の言葉で言えば〈ヤンキー文化〉）の起源の１つはグラム・ロックにありという話である。勿論、ファッションではなく純粋に音楽として考えれば、九谷さんの主張はかなり正しいのではないかと思う。Roxy Musicのファースト・アルバムを聴けば、Roxy Musicはキング・クリムゾンの弟分としてのアヴァンギャルドなバンドだということがわかる。或いは、観察の準位の差異。一次的観察に対する二次的観察。
それにしても、Roxy Musicというのは或る時期まで、10CCやジェネシスと並んで、英国では人気があるのに日本では不人気なバンドの代表とされていたのだ。