独逸以外の哲学(三木清)

三木清「哲学はどう学んでゆくか」『図書』710、2008、pp.2-5(Originally published in 『図書』1941年3月号)


『図書』では、「『圖書』創刊の頃」と題して、毎月1篇ずつ『図書』が創刊された1941年のテクストが再録されているらしい。但し、仮名遣いと漢字は改められている。
三木清のテクストの最後の部分で、独逸以外の哲学について語っている部分。因みに、テクストの前半では、高等学校時代にウィリアム・ジェームズ『心理学原理』を読んだことが語られている(p.3)。


ドイツは世界の哲学国といわれており、哲学を勉強するにはドイツのものを読まねばならぬが、ドイツの哲学には伝統的に難解なものが多いということがある。英仏系統の哲学になると、比較的やさしく読めるであろう。やさしいから浅薄であると考えるのは間違っている。ドイツの影響を最も受けている現在の日本の哲学書を難解と思う人には、英仏系統の哲学の研究を勧めたい。ドイツの哲学者でも画期的な仕事をしていた人は、英仏の影響を受けているものが多く、カントがそうであったし、近くはフッサールがそうであって、彼の現象学にはデカルトやヒュームの影響が認められる。その場合、入門的な書物として、さしあたりベルグソンの『形而上学入門』とかジェームズの『プラグマティズム実用主義)』の如きを勧めたい。フランスとかイギリスとかアメリカとかの哲学の真の意味は、日本では専門家の間でもまだ十分に広く発見されていないのではないかと思う。尤も、どこのものであるにせよ、外国の模倣が問題であるのでないことは言うまでもないことである。(p.5)