「ネットカフェ難民」問題

『毎日』の記事2つ;


ネットカフェ難民:全国で5400人 半数が非正規雇用−−厚労省初調査
(原文では折れ線グラフがあるが略)
◇20、50歳代で約5割

 住居がなくネットカフェや漫画喫茶などに寝泊まりする「ネットカフェ難民」が、全国で約5400人(推計)に上ることが、厚生労働省の初の実態調査で28日明らかになった。約半数は日雇い派遣など不安定な非正規労働者が占め、年齢別では、50代が20代に次いで多い。背景には雇用問題などがあり、中高年層に広がっている実態が浮かんだ。

 調査は今年6、7月、同省が把握しているネットカフェ、漫画喫茶の全3246店舗に電話で行った。回答があった1173店舗への個別アンケートから終夜利用の人数、週に半分以上寝泊まりする「住居喪失者」(ネットカフェ難民)数などを推計した。その結果、終夜利用は1日当たり約6万900人。「パソコンなどの利用者」が半数を超えたが、住居喪失者は1割近くの約5400人と推計している。

 住居喪失者では、アルバイトや派遣などの非正規労働者が約2700人で最も多く、職を探している失業者が約1300人、職を探していない無業者が約900人、正社員が約300人など。年齢別では、20代が26・5%と最も高く、次いで50代が23・1%。総務省労働力調査で、この二つの年代層は非正規雇用で働く人が多く、完全失業率も高くなっている。

 東京都と大阪府の265人の住居喪失者を対象にした調査では、約4割が路上野宿も経験、ファストフード店を終夜利用する人も4割を超え、路上生活などとカフェと両方の生活をしている実態が浮かんだ。求職については「日払いでないと生活が続かない」と答えたのが東京で4割、大阪で5割を超え、貧困が住居確保と就業の妨げとなっていることを示した。【東海林智、市川明代】

 ◇ネットカフェ難民調査や野宿者支援などにかかわってきた「自立生活サポートセンターもやい」の湯浅誠事務局長の話

 厚労省が4月に4年前よりホームレスが減少したとの調査結果を発表したが、景気回復や就労支援で問題が解消に向かっているというのは筋違いであることは明らかだ。

毎日新聞 2007年8月28日 東京夕刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070828dde001040014000c.html


ネットカフェ難民:仕事途絶え、中高年層にも拡大


 厚生労働省が28日公表した初めての「ネットカフェ難民」調査では、景気拡大が続く一方、貧困もじわじわと広がっている実態が浮かんだ。若者中心と思われていた難民だが、20代に次いで多いのは50代。路上とネットカフェの間をさまよう高齢者もいる。

 川崎市のJR川崎駅付近には、格安のネットカフェが並ぶ。午後9時台、6〜8時間のパック料金を利用しようという50代の男性が目立つ。

 自動車工場を10年前にリストラされた男性(51)は、日雇い労働の建設現場を渡り歩き、昨年からレンガを積む日雇い派遣で食いつなぐ。ネットカフェ暮らしが始まったのはそのころだ。でもネットはやらない。入店したらすぐ寝る生活だ。

 荷物は着替えの入ったリュック一つ。他の生活用品は、コインロッカーに預けている。「あしたは午前5時起きだから、早めに入って寝ちゃう」。店は8時間1380円、シャワーは別に500円かかるので、1回430円の銭湯を利用する。

 「社会保険も何もない日雇いみたいな派遣がやっと見つかった仕事。50万円ためてアパートの敷金礼金を作ろうと思ってる」。向かいのハンバーガー店を指さし、「若いのがたくさん寝てる。一晩100円。みんな椅子に座わりうつ伏せで寝てる。あれじゃ仕事はできないよ」と歳の離れた“仲間”を心配する。

 看板洗いの日雇いの男性(58)は、かつて野宿を経験し、市の就労支援センターを利用したこともある。だが、「いつもアパートの更新で(金がなくて)出されちゃう」と頭をかいた。汗に濡れたシャツに作業ズボンの男性(58)は、衣類を入れた小さなビニール袋をぶら下げていた。「建築の仕事がある日はここ。ないときはその辺で野宿だよ」と日焼けした顔をしかめた。

 厚労省の調査では、平均月収は10万円ちょっとだ。アパートを借りるための50万円は遠い金額。東京・新宿区のネットカフェを使っている男性(29)は、2年前のお盆の時期、日雇い派遣の仕事が途絶え、更新代が払えず、住居を失った。男性は「簡単に住む場所を失ったけど、家を借りるのがこんなに大変だとは思わなかった。来月30歳になる。もう限界。何とか立て直したい」と訴えた。【東海林智、市川明代】

毎日新聞 2007年8月28日 11時12分 (最終更新時間 8月28日 14時41分)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070828k0000e040034000c.html

岸政彦氏は『朝日』の記事を2つ引いている*1。その中に、森永卓郎氏の「非正規雇用の拡大で、新たな貧困層がネットカフェに集まっており、放置すればスラム化の恐れもある。今なら敷金や家賃の無利子融資など、わずかな支援で生活を立て直せるので、早急な対策が必要だ」というコメントがある。しかし、「スラム」が形成されないから「ネットカフェ難民」という問題が起きるわけだろう。「スラム」であれば、そこではコミュニティが形成される可能性もある。しかし(というか、それ故に)〈権力〉は〈寄せ場〉のような可視的な場所の出現を阻むのだろう。

派遣「会社」なんていうけど、でもこれは釜や山谷の暴力手配師といっしょやろ? えらいきれいな高層ビルに事務所があるだけで、もっと悪質で組織的や。
 きれいといえば、彼の泊まってるインターネットカフェや、マンガ喫茶も一見きれいやった。わたしの知ってる釜ガ崎や山谷とはえらいちがいや。
 釜ガ崎や山谷はしょん便臭かったし、ゴミだらけやし、ほこりっぽいし、見るからに何日も風呂に入ってなさそうなきたないおっちゃんがよろよろ歩いてた。信号なんかまもらんし、自転車に乗ってたらすぐオマワリに職質くらうし、路上にゴザをしいて、鍋や釜やひろってきた雑誌やら、かたっぽうだけの靴やとか、ありとあらゆる品物が並べた店があちこちにあって、その傍の溝におっちゃんが落ち込んで、おしっこもらしてそのままねむってる。ドヤは、布団1枚やっと敷けて、まっすぐ立てないようなとこ。なんやいかがわしい店からヤーさんがでてきて、昼間から見張りをたてて博打をやってる。暴動も起きる……
 そこは、あきらかに他とは違う場所やった。あそこは怖いところやから行ってはアカンよ、なんてサラリーマンとこのこどもはいわれてたやろ。
 景気不景気にもろ影響をうけて、使い捨て可能な存在として理不尽な扱いをうける人びとが暮らす街は、それでも、労働者の街やった。あちこちの飯場を渡り歩いてる人も、正月仕事のないときは帰ってくる場所や。そこにはなにより仲間がいる。仕事がないときはお互いさまいうて、めしをおごってくれる。早朝から夜遅くまでやってる銭湯もあるし、安くて食べられる食堂もある。カップ焼きそばやコンビニ弁当よりずっと栄養もあって、うまい。
http://saluton.asablo.jp/blog/2007/06/13/1577640
を引いておく。