「恨み」の捨て場がなかった

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


2019年02月25日 17時25分 JST
渋谷の児童養護施設長が刺殺される。警視庁、元入所者の男(22)を現行犯逮捕
男は「施設に恨みがあった。施設関係者なら誰でもよかった」と供述しているという
朝日新聞デジタル

児童養護施設で刺され死亡 元入所者「施設に恨み」

 25日午後1時50分ごろ、東京都渋谷区幡ケ谷3丁目の児童養護施設「若草寮」の1階施設長室で、施設長の大森信也さん(46)が男に胸や首を刃物で刺された。警視庁によると、大森さんは心肺停止状態で病院に搬送され、約2時間後に死亡が確認された。警視庁は住居、職業不詳の田原仁容疑者(22)を殺人未遂の疑いで現行犯逮捕した。

 代々木署によると、田原容疑者はこの施設の元入所者で、「施設を出てから4年がたっている」と説明。「殺すつもりで刺したことに間違いない。施設に恨みがあった。施設関係者なら誰でもよかった」と供述しているという。


朝日新聞デジタル 2019年02月25日 16時59分)
https://www.huffingtonpost.jp/entry/orphanage_jp_5c73a28ee4b00eed08367231

本当に「施設に恨みがあった」のだろうか。小林明子*1「「おかえり」とドアを開ける場所で、事件は起きた。児童養護施設が"実家"であるために」*2から引用する;

今回の事件の容疑者は、2012年3月から2015年3月まで同施設に入所していた。

毎日新聞によると、高校卒業後に施設を出て、郵便局関係の仕事につき、施設の職員が保証人になったアパートで1人暮らしをしていた。2018年9月に家賃未納などからアパートを退去してからは住まいを転々としていたとみられ、事件直前はネットカフェで生活していたという。

立神さん*3は、この容疑者のように施設を退所してから「仕事がない、住むところがない」という悪循環に陥るケースは少なくない、と話す。

「施設を出るときには、仕事と住居の両方を決めますが、行き詰まって仕事を辞めてしまうと家賃が払えなくなり、住むところを失ってしまいます。住所がないと仕事が決まらないので、風俗で働いたりネットカフェで過ごしたりする子がいます。施設の職員が自腹を切って食事を提供したり勤務時間外で相談に乗ったりしているのが現状です」

「施設に恨みがあった」というよりは、恨み言をぶちまける対象がほかになかったということなのだろう。
「恨み」を持たれても仕方がない「児童養護施設」というのは勿論あるわけだけだど*4、それはあくまで一部にすぎない筈。