〈第三世界〉はどこにでもある

承前*1


http://www.asahi.com/business/topics/TKY200607310073.html


 「もう当たり前のビジネスモデル。今の新工場っていうのは、大量の請負労働者を使うことを前提に設計しているんです」

 ある大手請負会社幹部が自慢げに説明した。実際、ここ数年で立ち上がったデジタルカメラ、薄型テレビなどの最新鋭工場では、請負労働者が正社員より圧倒的に多い。


 外部委託の最たる例が請負労働だ。とくに「偽装請負」という仕組みは、メーカー側が彼らを直接、指揮命令できるという点で好都合だった。「品質を保つには指示も必要で、工場の生産ラインの大半は偽装請負にならざるを得ない」とメーカー関係者は明かす。

 請負の活用は、電機業界の採用を機に爆発的に増えた。自動車などよりも海外との競争が激しい上、製品の寿命も短い。ころころ変わる現場の仕事に順応しやすい請負労働者が大量に必要になった。とくに、細くてよく動く指をもつ若い女性や、重いモノの運搬に耐えられる若い男性をメーカーは欲しがった。

 その要求通り、請負会社は、東北、九州など求人の少ない地方から大量の若者を集めた。地方から都会に出る出稼ぎと違い、彼らの多くは地方から地方へと送り込まれた。そこに最新鋭工場がつくられたからだ。

昨年、あるテクスト*2で、〈第三世界〉というのは海の向こうにあるのではなくて、〈先進国〉の中に埋め込まれているのだというようなことを書いたのだった。