狗/パニック

 今年は戌年であるにも拘わらず(という言い方はおかしいけれど)、犬に関してはちょっとショッキングな事件が起こっている。


 DONG Zhen “Dogs gunned down as rabies spooks village” Shanghai Daily 24 February 2006


上海郊外の南匯区Wangqiao Villageで、1匹の野良犬に連続して赤ん坊を含む4人が噛みつかれるという事件があった。犬は何処かに逃げてしまった。噛みつかれた4人は何れも「狂犬病」の反応は出ていないという。これだけではニュースにはならないのだけれど、その後、「狂犬病」への恐怖のためにパニックが起こり、地元の衛生当局は周囲3キロ以内のあらゆる犬を射殺するように指令を出した。野良犬だけでなくて飼い犬も含めて。23日夜の段階で既に140頭が殺されているという。また、(社会的圧力によってか)自らの飼い犬に手をかけた人もいたという。Pet Planetという動物愛護団体のメンバーが射殺を阻止しようと現地に乗り込んだものの、既に〈虐殺〉は起こった後だった。また、そもそもの〈犯犬〉がつかまったのかどうかはわからない。
社会的パニックというのはけっこう簡単に起こるものなのだな。今回の場合、同じ上海市内のこととはいえ、上記の記事はかなり冷ややかに事件を観察している。しかし、口コミやらネットやらで、またメディアが煽ることによって、パニックが広範囲に短期間で拡大する可能性があるとすれば、恐ろしいことではある。*1中国に限らず、何処の社会においても。

 犬といえば、『三聯生活週刊』の2月20日号が「中国犬的当代命運」という特集を組んでいる。現代の商業主義化も含めて中国の犬文化の歴史と現状を見直すもの。とはいっても、私の語学力ではこれを短期に読み通すというのは、很難的なのだけれども。また、中国に限らず、日本に関しても、〈文化としての犬〉を巡っては全く無知であったことに気づく。

*1:但し、話がローカルな閉域から漏れ出すことによって、却って相対化され、パニックが萎んでしまうという可能性もある。