4段階

冨原眞弓『シモーヌ・ヴェイユ*1から。


ヴェイユの思索的活動はおおよそ四つの時期に分けられる。子ども時代に書いた詩や寓話はべつとして、いまも現存する資料にかぎると、一六歳から三四歳までのせいぜい一八年間という短い年月である。(略)
第一期(一九二五-三一)は高等中学と高等師範学校の学生としてアランに師事した「哲学修業の時代」、第二期(一九三一-三四)は教師と革命的労働組合運動を経験し、最初の長考「自由と社会的抑圧の原因をめぐる考察」を著した「革命的関与の時代」、第三期(一九三四-四〇)は工場就労、人民戦線政府、スペイン内戦、大戦勃発へとつづく「工場と戦場における不幸の体験の時代」、第四期(一九四〇-四二)は敗戦、第三共和政崩壊、ヴィシー政権マルセイユ―ニューヨーク―ロンドンの亡命生活、そして最後の長考『根をもつこと』へと収斂する「思索の充溢の時代」である。(略)初期著作の意義と真価は、後期著作との比較においてこそ明確になる。三四歳で亡くなるまでのほぼ二〇年間に書かれたテクストを通読すると、ヴェイユの思想に根本的な変化はみられない。あるのは熟考と経験のもたらす深化であり重層化である。そして、大胆にして厳密な思考がじっくりと形成されていく有機的なプロセスは、読者を魅了する。ヴェイユにとって生きた思考とは、抽象的な一般論から具体的な事例へと肉化するものであった。(pp.9-10)