鹿はわからぬ

「マゲシカ」https://nessko.hatenadiary.jp/entry/2023/09/10/102024


マゲジカ」という存在を初めて知った。
共同通信(『東京新聞』)の記事;


マゲシカは独自の遺伝系統 自衛隊基地建設の影響懸念
2023年9月8日 16時55分 (共同通信
 


 福島大や北海道大などの研究チームは8日、鹿児島県の馬毛島種子島に生息するマゲシカが、独自の遺伝子系統であることを確認したとする論文を、日本生態学会が刊行する「保全生態学研究」電子版に掲載した。馬毛島では自衛隊の基地建設が進み、生態系への影響が懸念されている。研究者は生息環境を含めた保全の必要性を訴えている。
 マゲシカは日本列島に広く分布するニホンジカの亜種とされるが、分類上の位置付けが不明確で、環境省は「地域個体群」として絶滅危惧種リスト(レッドリスト)に掲載している。防衛省が公告した環境影響評価(アセスメント)の評価書では700~千頭馬毛島に生息すると推定した。
https://www.tokyo-np.co.jp/article/275852

研究については、


北海道大学大学院文学研究院・大学院文学院・文学部「【研究成果】謎の鹿マゲシカの正体に DNA データで迫る―亜種ヤクシカと同時期に分岐した独自系統であることが判明―
https://www.let.hokudai.ac.jp/news/22914
福島大学森林総合研究所北海道大学合同会社エゾリンク「謎の鹿マゲシカの正体にDNAデータで迫る—亜種ヤクシカと同時期に分岐した独自系統であることが判明—」https://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2023/20230908/index.html


マゲジカ」は「鹿児島県の馬毛島種子島に生息する」とされており、上掲の研究でも馬毛島とともに種子島のサンプルが使用されている。しかし、国立環境研究所の『侵入生物データベース』によれば、「マゲジカ」の「自然分布」は「馬毛島大隅諸島)」であり、1945年に「観光目的」で「臥蛇島トカラ列島)」と「阿久根大島(鹿児島県阿久根市)」に「移入」されたとある*1。「自然分布」にせよ(外来生物としての)「移入」にせよ、「種子島」の言及はない*2
さて、日本国内には、「ニホンジカ*3の亜種として、エゾジカ、ホンシュウジカ、キュウシュウジカツシマジカマゲジカ、ヤクジカ、ケラマジカが棲息しているという。先ず、北の方では亜種の分化がかなり大雑把だなと思った。これは、北海道にしても本州にしても九州にしても、自然な移動や人為的な交配によって遺伝子の系統が混合・画一化して、亜種の分化が阻害されているということなのだろうか。他方、南西諸島以南には3つも亜種が存在している。また、最南端として、沖縄の慶良間諸島ケラマジカが棲息しているが、沖縄本島にもその南の宮古諸島八重山諸島にもシカはいない。しかし、台湾にはタイワンジカという亜種がいるのだった*4。かつて沖縄本島にも鹿はいたけれど絶滅したのか? 或いは、タイワンジカは中国大陸経由でやって来たのか?
なお、「馬毛島」の概要をWikipediaで読んだのだが、「自衛隊の基地建設」以前に、この島は特に土地の利権を巡ってはかなり波瀾万丈な歴史を辿ってきたのだな、と思った*5