小倉孝保*1「プーさんと銃社会」『毎日新聞』2023年6月9日
曰く、
第一次世界大戦が始まった1914年、カナダ陸軍獣医隊の中尉はペットの子ぐまを連れて英国に渡った。猟師によって母を失った雌で、「ウィニー」と呼ばれた。
訓練を終えた部隊はフランスの激戦地へ向かう。その際、ウィニーは同行が許可されず、ロンドン動物園に預けられた。その愛くるしさに魅せられたのが英作家A・A・ミルンと幼い息子、クリストファーだった。
息子のぬいぐるみ(テディベア*2)の名も「ウィニー」に変えた。ミルンは26年、児童小説「クマのプーさん」(原題「ウィニー・ザ・プー」)を発表する。
第一次大戦に従軍したミルンは戦後、平和の尊さを説き続けた。戦争を描かない理由について、「悪夢のようで。考えるだけで吐き気がする」と述べている。
「プー」の性別について意識したことがあっただろうか。(特に日本では)何となく雄なんじゃねぇと思っていた人もいるのではないだろうか? 勿論、Winnieが女性用の人名なので、英語圏の人にとっては、プーが雌熊であることは自明の事柄に属するといえるだろう。しかし、日本語においては、「ウィニー」という名前は隠されて、残るのは「プー」だけだ。「プー」から性別を判断するということはかなり難しい。また、オリジナルにせよディズニー・プーにせよ、ステレオタイプ的に女性と判断されるような要素はないのだった*4。
米テキサス州で先月、子ども向けの銃撃事件対応マニュアル(小冊子)に「クマのプーさん」が登場した*3。米国での知的財産権が昨年消滅したことを受け、危機管理会社が人気キャラクターで子どへの浸透を図った形だ。
ミルンと第一次世界大戦については、
高山宏「クリティックなんて「プー」! A・A・ミルン文学の「プー」ラドックス」『ユリイカ』2004年1月号[特集*クマのプーさん]、pp.61-71 *5
をマークしておく。
ここまで書いてきたのだが、「ウィニー・ザ・プー」が「男の子」であると詳細に考証したエントリーがあることを思い出したのだった;アサイ「「クマのプーさん」はやっぱり男の子だった件」https://asay.hatenadiary.jp/entry/20110825/1314284743
以前にマークしておきながらも全く忘れていた*6。一言でいうと、theのマジック?
*1:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20130918/1379462503 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20141006/1412610658
*2:その当時、Teddy Bearという言葉はあったのか?
*3:See Ed Pilkington "Winnie-the-Pooh book teaches Texas kids to ‘run, hide, fight’ in a shooting" https://www.theguardian.com/us-news/2023/may/25/winnie-the-pooh-books-teaches-texas-kids-run-hide-fight-shooting
*4:誰もが一瞥でミッキーとミニーの性別を区別できることとは対照的。
*5:Mentioned in https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20081226/1230259822 https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20110104/1294135632
*6:https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20170606/1496717265