「正解」のない世界

手塚マキ*1「話題の本」『毎日新聞』2021年11月20日


曰く、


『ケアマネージャーはらはら日記』(岸山真理子著・三五館シンシャ・1430円)の著者はこの道21年のベテランだが、自分を「成長できていない」と振り返る。読み進めると、確かに介護職とはある意味で成長のしようがない職業なのだとわかる。なぜなら、常に違う人を相手にしないといけないからだ。いつだって一人一人に向き合い、新しい関係を作らなければ成り立たない。本書にも、首をくくるのを手伝ってほしい、生活保護を受けたくないなど、様々な人が登場する。考え方も生いたちも違う人々に、個別に対応するのが介護なのだ。だからこそ、絶対の正解がない。

ホストクラブでもマニュアルは基本的にない。お客様は一人一人違うし、対応するホストも一人一人違う。先輩が後輩に指導しても、それぞれの感覚で接客する。なぜならホストクラブは、完全な個人売上制だからだ。先輩の言うことを聞いて失敗しても自分の身に降りかかってくる。(後略)

彼女が向き合った、一人一人の人生の物語がこの本には詰まっている。具体的な話だが、それが行き着くのは社会の問題だ。介護に関わる人だけでなく、この事実を知ってもらい、一人一人のニーズに応えられるネット絵ワークを備えた社会を急ぎ足で作らなければいけないと思わされた。
ところで、この「手塚マキ」という方、名前から判断して女性だとずっと思っていたのだが、先日某TV番組に出演しているのを見て、男性なんだと初めて気づいた。