「ラテン系」?

國崎万智「「大麻使用者はラテン系の服装を好む」と教育か。警察官が法廷で証言、県警は否定 群馬」https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_630ee6cee4b063d5e61fcb41


曰く、


「ラテン系の服を着ている人は大麻取締法違反の可能性がある」とする教育が、警察内部で行われた可能性が浮上している。

発端となったのは、ある大麻取締法違反事件をめぐる公判。被告人は2021年8月、群馬県内の路上に駐車中の車内で大麻を所持していたとして、大麻取締法違反の罪で起訴された。現在前橋地裁で裁判が続いている。

2022年5月に開かれた公判で、被告人に当時職務質問をした群馬県警の警察官への証人尋問が行われた。

被告に職質をした理由の一つとして、警察官は法廷で、「(被告が)大麻使用者が好むラテン系の服装だった」ことを挙げた。

さらに、「大麻使用者はラテン系の服装を好む」という認識について、警察官は「以前勤めていた機動警ら隊で教養を受けた」と公判で発言。被告の弁護人が「機動警ら隊でそういう教育をしているんですね」と再び確認すると、警察官は「あくまでも参考情報にはなります」と説明し、認めた。

一方、弁護人が「群馬県警では、ラテン系の服と大麻取締法は強い関係があるということを共通認識として持っているということでよろしいですか」と尋ねると、警察官は「強い関係とまでは言えないと思います」との見方を示した。

「ラテン系の服装」が具体的にどのような身なりを指すかは、法廷では明らかにされなかった。

他方、群馬県警はそのような「教育」*1の存在を否定している。
ところで、「ラテン系の服装」って何なんだ? バレンシア*2か? それとも、西班牙のファスト・ファッション、ザラか? わからない。しかし、これは私が無知だからなのだろうか。証人になった警官は「ラテン系の服装」ということでぴんと来て、「職質」を行ったわけだ。もし警察内部で「教養」が行われていたとすると、ファッションとかには疎い筈の中高年の警官でも「ラテン系の服装」ということでぴんと来ることができるの? 
今回は、「合理的な根拠を欠いた偏見に基づく職務質問」が問題になっている。

服装など外見を理由とした不当な職務質問は、これまでも度々問題になってきた。

差別的な職務質問に関して、警察庁は2021年12月、全ての都道府県警に文書を送付。この中で、「職務質問の対象となる者であるかを判断する際には、その容姿や服装等の外見のみを根拠とすることのないよう」指導を徹底することを求めた。

差別的な職質の問題に詳しい西山温子弁護士は、「服装や髪型などは、犯罪の疑いをかける根拠とは本来なり得ない。警察内部で、差別を助長する教育がなされているのであれば問題だ」と指摘した。

大麻使用者はラテン系の服装を好む」ことを理由とした職質について、中島広勝弁護士は「合理的な根拠を欠いた偏見に基づく職務質問であり、人権侵害に当たる」と批判する。

「警察官の証言からは、職務の中で(ラテン系の服装の人は犯罪の疑いがあるとする)偏見を身に付けたことが分かる。客観的なデータや根拠に乏しい職務質問を推し進め、それを許容する指導や教育が行われていないか、県警は調査するべきだ」と強調した。

ただ、「外見」に基く推論というのは、字義的な意味で「偏見」(prejudice)というのは日常的に行っている。また、それを前提とした印象操作も。そうでなければ、制服とという制度は存立し得ない。
問題は、「外見を理由とした」「職務質問」ではなく、(今回の場合だと)「ラテン系の服装」と「大麻」を繋ぐのに、どのような〈理論〉が使われているのかを問うことだろう。
それにしても、群馬県警を批判する側にとっても、「ラテン系の服装」が何かというのは自明な事実であるらしい。

*1:警察用語では「教養」というらしい。

*2:See also https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/20180530/1527701256