知らないことばかり

長光明、村田風佳、田島輔「総選挙FactCheck】スマホ3Dプリンタ量子コンピュータは日本の発明?甘利幹事長の発言は『不正確』」https://infact.press/2021/10/post-14149/


甘利明*1NHKの番組で「ここにあるこのスマホ、世界を席巻しているスマホも、3Dプリンターもあの量子コンピューターも、全部日本の発明です」と発言したのだという。甘利に蒙昧! と言おうとしたが、止めた。そう言った途端に唾が自分の顔に戻ってくるんじゃないかと思ったのだ。


1992年、アメリカのIBM社は、ラスベガスで開催されていたコンピュータ関連の展示会で、画面にタッチパネルを組み込んだ携帯電話「Simon」を発表した(発表時は「Angler」との名称)。その後、1994年に「IBM Simon Personal Communicator」の一般販売が開始している。
この 「Simon」が世界初のスマートフォンといわれていることから、「スマホは日本の発明」という発言は「誤り」だ(ただし、製造は日本の三菱電機が行っていた。)。
知らなかった。ところで、「スマートフォン」の定義というのは「タッチパネル」で操作する携帯電話ということになるのか?

1980年に、3Dプリンターの根幹技術である光硬化性樹脂を使用した「光造形法」を発明したのは、名古屋市工業試験所で働いていた小玉秀男氏だ。ただし、「当時作れたのは丸太小屋みたいなレベルの家の模型」であり、発明の将来性が周囲に認められることはなく、最初に3Dプリンターの実用機を開発したのは米国企業となってしまった(参考*2)。

量子コンピュータ*3とは、「量子力学」を計算過程に用いることで従来型コンピューターを大きく超える処理能力を実現した次世代コンピューターだ。
量子コンピューターを初めて実用化して販売したのは、カナダのベンチャー企業「D-Wave Systems社」であり、同社は世界初の量子コンピューター「D-Wave One」を2011年に発売している。

もっとも、量子コンピューターの開発に日本人が大きな貢献を果たしたことは事実だ。
D-Wave System社が実用化した量子コンピューターの原理は「量子アニーリング」と呼ばれるものだが、1998年にこの概念を初めて提唱したのは、東京工業大学の西森秀稔教授と当時大学院生の門脇正史氏だった。
また、量子コンピューターの動作単位となる素子である「量子ビット」の開発にも、東京大学の中村泰信教授と東京理科大学の蔡兆申教授が大きな貢献を果たしている。

甘利は自慢の仕方についての津原泰水氏の提案を傾聴した方がいいかも知れない。まあその提案は別の人に向けられているのだけど。