基礎知識以前

『ハフィントン・ポスト』(『朝日新聞』)の記事;


スパコン超える「量子コンピューター」 国産試作機を無償公開へ
2019年度末までに国産での実用化を目指す。
2017年11月20日 09時15分 JST |


国産量子コンピューター試作機、無償公開へ 改良目指す



 スーパーコンピューターをはるかに超える高速計算を実現する「量子コンピューター」の試作機を、国立情報学研究所などが開発し、27日から無償の利用サービスを始める。世界的な開発競争が進むなか、試作段階で公開して改良につなげ、2019年度末までに国産での実用化を目指す。

 従来のコンピューターは、多数の組み合わせから最適な答えを探す際に一つずつ計算するが、量子コンピューターは極小の物質の世界の現象を応用し、一度に計算する。現時点では一度に計算できる組み合わせは、スパコンの数千分の1〜数十分の1程度だが、理論上は1千年かかる計算も一瞬で済むとされ、人工知能や新薬の開発、交通渋滞の解消などに役立つことが期待されている。

 基礎研究は1980年代に始まり、日本の業績も世界的に評価されている。だが、実用化では米IBMやグーグルなどが先行。カナダのD―Waveシステムズは11年に一部実用化し、米航空宇宙局(NASA)や自動車部品大手「デンソー」、東北大などが活用している。

朝日新聞デジタル 2017年11月20日 05時05分)
 http://www.huffingtonpost.jp/2017/11/19/quantum-computer-made-in-japan_a_23282410/

この記事の記述で「量子コンピューター」とは何かということがすぱっとわかった人はどれくらいいるのだろうか。
Wikipediaを読んでみると*1、「量子力学的な重ね合わせ」というのがカギ概念であることがわかった*2。何故か、日本語版よりも英語版の方がわかりやすい;

Quantum superposition is a fundamental principle of quantum mechanics. It states that, much like waves in classical physics, any two (or more) quantum states can be added together ("superposed") and the result will be another valid quantum state; and conversely, that every quantum state can be represented as a sum of two or more other distinct states. Mathematically, it refers to a property of solutions to the Schrödinger equation; since the Schrödinger equation is linear, any linear combination of solutions will also be a solution.

An example of a physically observable manifestation of superposition is interference peaks from an electron wave in a double-slit experiment.

Another example is a quantum logical qubit state, as used in quantum information processing, which is a linear superposition of the "basis states" {\displaystyle |0\rangle } |0\rangle and {\displaystyle |1\rangle } |1\rangle . Here {\displaystyle |0\rangle } |0\rangle is the Dirac notation for the quantum state that will always give the result 0 when converted to classical logic by a measurement. Likewise {\displaystyle |1\rangle } |1\rangle is the state that will always convert to 1.
https://en.wikipedia.org/wiki/Quantum_superposition

量子コンピュータ」をわかりやすく説明するのにはやはり「重ね合わせ」が関門になるようだ;


田中慶「量子コンピュータとは」http://lyman.q.t.u-tokyo.ac.jp/Member/Tanakei/study/study00_qcom.htm


先ず、「古典的コンピュータ」について;


古典的コンピュータはTuring*3によってその動作原理が考案されました。
 この原理ではそれ以前のすべてのコンピュータが行える計算を同程度のステップ数(計算の手順数のこと)で行うことができます。
 それゆえに一般に「Turing Machine」と呼ばれている原理に基づいたコンピュータは現在のほぼ全てのコンピュータの基礎になっています(「ほぼ全て」ではなく「全部」と書きたいところですが世界中のどこかにあるかもしれないので・・・(笑))
 Turing Machineは名前は知らなくてもその基本原理はおそらく多くの人が知っていると思います。
 計算の基本単位をbit(binary unit)とし、それぞれが0か1の状態をとることにより2進数で数を保持し演算を行うというものです。
 このbitは同時に1つの状態を表すことができます。
 言い換えると2つ以上の状態を同時に表すことはできません。
 ちなみに、現実のデバイスでは0または1という状態を表すのを電圧のon/offで行っています。
量子コンピュータの簡単な原理」ということで;

では、量子コンピュータはどういう動作原理に基づくものかというと、「状態の重ね合わせ」というのがポイントになっています。
 「状態の重ね合わせ」とは同時に2つ以上の状態を表すことができるということです。
 ですので直感的にいうとある状態が1でもあり、2でもあり、3でもあり、4でもあるという感じです。
 ですが、実際には1か2か3か4のいずれかが観測されます。
 「じゃあ、重ねあわせになってるの?」と思うかもしれませんが、これがなってるわけでして。
 上の例でいうと1と2と3と4とが確率的に重ねあわされています。
 確率的・・・と聞いてぴんときた方もいるかと思いますが、量子コンピュータでは観測するごとに結果が違ってきたりします。確率ですので。
 さて、状態の重ね合わせが実現できることによって、どんないいことがあるかというと、簡単にいうと「ある計算が効率よくできる」ということにつきます。
けっこう苦しいようだ。