「エンタメ」と「純文学」

須藤唯哉*1「初の純文学 未知の扉開く」『毎日新聞』2021年5月8日


東山彰良の短篇集『どの口が愛を語るんだ』を巡って。


「エンタメ系の作品を書いている時には起承転結やカタルシスを重視していたが、そのくびきから解放されて自由に書けた感じがした」。故郷台湾を描いた直木賞受賞作『流』など、これまでエンターテインメント小説を世に送り出してきた著者が、初めて純文学の領域に足を踏み入れた。

エンタメ小説と純文学。両者で魅力ある作品を描くには、ウソと真実のバランスが鍵になると考えている。「ウソが多くて真実が少なすぎるエンタメ小説はつまらない。逆に真実が多すぎてウソが少ない純文学はつまらない。その間にあるどこかに、僕の居心地のいい物語なり、文章なりがあると思う」。連作ではない短編集は、本書が初めて。(後略)