How littleから始まった

井上未雪*1「「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」は日本語で何と訳す? “正解”求めず、翻訳し続けるということ」https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_5f4771ccc5b697186e315d86


Black Lives Matterの翻訳を巡るあれこれ。
数か月前に拙blogでもBlack Lives Matterの翻訳問題を取り上げた*2。その本文はともかくとして、redkittyさんのコメントは重要だと思う。最近、BLMを巡るNHK(Eテレ)の番組でも明らかにされたが、Black Lives MatterというのはHow little Black lives matter!(黒人の生命の何と軽いことか!) という嘆きから始まった。


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matterって訳し方がむずかしくて、高校で「物質あ問題の重大だ故障エスの事情」って教えてもらい、もっぱらこれを利用していたことがあります。つまり、無冠詞は物質、a matterは問題、no matterは重大(でない)、the matterは故障、mattersは事情ですね。左記は名詞の場合ですが、動詞は否定+で使うのが基本で、(否定+)matterは、重大だ(でない)です。それがあってBlack lives matter.なので、ブログ主の書かれているとおりと思います。訳に反映させているのを初めてみました。
柴田元幸ツイッターで書いているように、日本語訳が「どれも物足りない」のは、「日本語では「は」「も」「が」等を選べることが話をここではややこしくしています」ということが問題なのではないのですね、と思います。最初にあるnoの意味がはいっているかどうかなんですよね。


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2020年6月17日の朝日朝刊に後藤正文さんが、ピーター・バラカンさんが「黒人の命を軽くみるな」とされていると書かれています。「どうでもよくないよ!」と同じで、どちらももともとのmatterが含意しているというかこの語の裏に貼りついているnoを含んだ訳となっています。「軽くみるな」「どうでもよくない」で決定、しっくりですね。


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2013年7月の黒人少年射殺事件に、「公民権運動家アリシア・ガーザが『...黒人の命がいかに軽いかに(how little black lives matter)』とフェイスブックに書き込んだことでBlack lives matterというスローガンは生まれた。」(2020年7月7日日経夕刊)と柴田元幸さんが書かれています。

>最初に意識したmatterは否定形だった。
>Black lives matterというのはmatterではない状況に対する応答

というのは、あらためてほんとうにそのとおりだと思います。