Minagawa talks

昨日まで開催されていた『ミナ ペルホネン/皆川明 つづく』*1は11月に観ているのだけれど。


阿久根佐和子「皆川明さん「 いつまでも想像が止まらない気がしています」」https://www.asahi.com/and_w/20200207/1223861/


皆川明*2へのインタヴュー。
少し切り抜き。


―― 展示は、「種」「森」「風」「根」など自然のエレメントの名前のついた8つの部屋に分かれている。それぞれに、ブランドや皆川さんの個性が発揮されていました。仔細に拝見していくと、皆川さんの中に、優しさと厳しさ、大らかさと細やかさ……という相反する個性があることを発見できました。


皆川 おっしゃる通り、僕自身の性格はカオスです(笑)。周囲が理解できないほど細かいことにこだわるかと思えば全く感知しない領域もありますし。自分でも自分がどういう人間か理解できない部分もあって、それに付き合う人たちの苦労をはかることもできません(笑)。

「種」の部屋にもあるのですが、四角い枠のなかにいくつものドットが並ぶミナ ペルホネンのロゴは、さまざまな個性の集合が一人の人をつくるという意味合いを込めています。極端さの度合いはさておき、誰しもアンビバレントな面を持っていて、その時、その環境に合った「自分」が出てくるものだと思うんです。個性や性格って相対的なもの。そのひとつが僕たちのモノづくりに共感してくれるといいなと思っているんです。


―― 本展には、新聞の連載の挿画など、皆川さん個人名義での作品も展示されています。チームとしての創作と個人での創作に違いはありますか。


皆川 “潜り方”が明らかに違いますね。チームの場合は、周囲の様子を伺いながら自分がやるべきことをやる。一方、たとえば自分で絵を描く場合には、ただ自分が自分の頭の中に入ってしまえばいい。目の前の現実世界がなくなって、そこに入り込む感じです。だから、展示している連載の挿画なども、どうやって描いたかうろ覚えのことがほとんどです。


―― &wの読者のなかにも、「ミナ ペルホネン」の服に憧れを持ち、考え抜いて買った服を大切に着ている、という人がたくさんいるはずです。生地から丁寧につくられる「ミナ ペルホネン」は、ものに愛着を持つことの真の意味を教えてくれる。ものを大切に使っていくそのような方向性は、皆川さんが昔から持たれていたものですか?


皆川 僕が20代を過ごしている頃はバブル期でブランドを始める頃にはバブルが崩壊し、世界は不景気の真っ最中。その時に僕は、何かを変えるとてもいいチャンスだとも思ったんです。ものづくりのやり方も、使う側の考え方も変わることができるんじゃないかと。

こういう時代にファッションブランドを立ち上げるからには、そのタイミングでやるべきことをやりたいと考えました。その時点で「せめて100年つづくブランドに」という思いを持っていたのですが、100年後の未来が見えていたわけでは決してなくて。こうあるべきだという理想像はあるけれど、そこに至るにはとても僕の持ち時間では足りそうもない。だから次の人、その次の人に託したいという気持ちですね。


―― 「ミナ ペルホネン」のものづくりも皆川さんご自身の創作も、有機的で自然をモチーフにとったものがとても多いと感じます。それらを生み出す皆川さんの原風景とはどんなものですか?


皆川 僕の生まれ育ちは京浜工業地帯の蒲田。自然とは程遠い環境なんです(笑)。でも、だからこそいつまでも想像が止まらない気もしています。幼い頃の記憶のなかに自然の姿があれば、そこを描くようになるかもしれないけれど、僕の場合はそれがないから、空想が生まれやすいのかもしれません。自然に憧れているというのでもなくて、頭のなかにその世界ができてからは、そこへ行けば自分だけの自然があるという感じです。

「シェルハウス」について;

―― 本展では、皆川さんのアイデアをもとに中村好文さんが設計された“簡素で心地よい宿”のプロトタイプ、「シェルハウス」も展示されていました。プランがフィボナッチ数列の図形がベースになっている一軒家、ありそうでないアイデアでした。ブランドの25周年を目前に、皆川さんと「ミナ ペルホネン」は、さらにその先へどのように進んでいかれるのでしょうか?


皆川 「シェルハウス」は柱のない構造体で、巻貝状に外壁がそのまま内壁になっていく。既存の方法では構造計算ができないらしいのですが、構造体としての完璧さはすでに自然界でわかっていること。単に今までこういう建築がほとんどなかったということでしょうか。

今後も建築をやりたい、家具をつくりたい、というのとは違って、実はつくるものはお菓子だって建築だっていいんです。そのジャンルで今までにはほとんどなかったけれど、整合性はあるアプローチを探し出し、ものをつくっていくことが楽しい。これからもそれは変わらないと思います。