「経済効果と依存症対策ばかりの議論にも納得できない」(植島啓司)

承前*1

少し前の『朝日新聞』の記事;


カジノ実施法が成立 最大3カ所で設置可能に
2018年7月20日21時31分


 カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が20日夜の参院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会の賛成多数で可決、成立した。

 カジノ実施法の成立により、刑法の賭博罪にあたるカジノについて、国内に最大3カ所の設置が例外的に認められることになる。ギャンブル依存症対策として、入場料を「6千円」とし、「28日間で10回」といった入場回数制限も盛り込まれた。

 政府はカジノ収益で併設する大規模な国際会議場や劇場などを運営する仕組みを想定。訪日外国人を増やす起爆剤として東京五輪後の成長戦略に位置づける。2020年代前半にもIRが開業する見通しだ。
https://www.asahi.com/articles/ASL7N4DWHL7NUTFK012.html

毎日新聞』は7月25日付で「カジノ解禁を考える」という特集を組んでおり(「論点」)、鳥畑与一(経済学者)、西川京子(ソーシャル・ワーカー)、植島啓司宗教学者)の3氏へのインタヴューを掲載している。鈴木英生記者*2による植島啓司氏へのインタヴュー「問題は「遊び文化」の貧困」に曰く、

賭け事は占いとルーツが同じとされる。「未来を知りたい」というのは人間の根源的な欲望であり、知る手段として、古代からくじやさいころが使われた。手段の部分が宗教行為から独立して、賭け事が生まれた。起源からして、人が熱中、没入するものなのだ。
依存症対策は確かに必要だろう。ただし、賭博だろうが、阪神タイガースだろうが、チョコレートだろうが、人生の楽しみには、程度の差はあれ、依存性がある。問題は、どう向き合うかだ。
世の「統合型リゾート」に関する議論全般に対する感想は、タイトルに使った植島氏の言葉に尽きるのだが、その一方で、日本(及び中国の江南地方)の伝統を鑑みれば、そもそも「統合型リゾート」は「カジノ」じゃないだろうという気がする。結論を先に言うと、それは遊郭である。何年も前に、ネットで買売春の是非についての議論があったのだけど、誰もが近代アングロ=サクソン的な買売春のイメージを全く自明なものとして前提としていたことに吃驚した。まさに、セックス(性交)の売買。実際、英国の影響を受けた新嘉坡や香港ではそのようなイメージの下に買売春が合法化されている。しかし、 日本(及び中国の江南地方)のハイ・エンドな伝統に従えば、遊郭において性交というのは酒、料理、歌舞音曲といった総合的なエンターテイメントの一部でしかない。さらにいえば、メイン・ディッシュではなくあくまでもデザートなのだった。