ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』

トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)

トゥルー・ストーリーズ (新潮文庫)

ポール・オースター『トゥルー・ストーリーズ』(柴田元幸訳、新潮文庫、2007)を読了したのは先月のこと。


赤いノートブック
なぜ書くのか
その日暮らし――若き日の失敗の記録
事故報告
スイングしなけりゃ意味がない


折々の文章
「あれを読むと、以前僕の母親の身に起きたことを思い出すよ……」
サルマン・ラシュディのための祈り
ゴサム・ハンドブック
ペンシルヴェニア州知事への嘆願
訳者から
戦争に代わる最良の代替物
段ボール箱
覚え書き 二〇〇一年九月十一日、午後四時
NYC=USA
地下鉄


訳者あとがき
文庫版のための訳者あとがき

ポール・オースターのエッセイ集。以前読んだオースターのエッセイ集『空腹の技法』*1がどちらかというと、仏蘭西文学研究家による文藝批評集という趣きを持つのに対して、こちらの方で前面に出てくるのは、本のタイトルにも示されているように、著者或いはそれ以外の人が経験した事実、それも小説よりも奇なるといっていい事実である。
空腹の技法 (新潮文庫)

空腹の技法 (新潮文庫)

本書は日本で編集されたもの。本のタイトルの『トゥルー・ストーリーズ』は、「赤いノートブック」、「なぜ書くのか」、「事故報告」、「スイングしなけりゃ意味がない」の4篇が収録されていたエッセイ集のタイトルから。著者の若き日の貧乏生活を綴った「その日暮らし――若き日の失敗の記録」は、もともとこれだけで単行本として刊行されている長編エッセイ。前半に収録されたこれらの諸篇が小説よりも奇なるといっていい事実についてのエッセイで、後半に「折々の文章」として収録されているのは、911以降の時事的・政治的発言を含むエッセイ群。