「官」の突出

承前*1

藤田弘夫「空間表象から見た公共性の比較社会学――社会理論から公共性論へ――」in 『現代社会学理論研究』3、pp.16-27


少し抜書き。


(前略)江戸時代は公に対置されていたのは年貢の「五公五民」のように、民であった。しかし明治の官制の復活で、官と民が対置されるようになる。官は民を突き抜けて聳え立つことになる。そこで、官と民が対置されるようになる。(後略)(p.20)

江戸時代は公の対概念は民であった。公方とは武士の頭領である。明治に古代の官制が復活した。戦前は官の国であった。戦後に官は「国」と表現されるようになる。官立大学は国立大学となり、官員や官権*2は国家公務員となった。「公用車駐車場」と「官用車駐車場」の表記の違いもそのひとつである。明治初頭の公有地とは村の共有地であった。しかし明治7年の「官民有区分」で公有地は官有地と民有地に分けられた。その後、土地は、国有地と民有地に分かれ、民有地は公有地と私有地に分けられた。しかし官の用語は官僚をはじめ生き続けている。警察官は戦後、ほとんどが地方公務員となったので、法的には官ではなくなったが、このことばを使い続けている。国立の施設では各方面で事務官と並んで、教官のことばが使用されている。(p.21)
私立大学なのに「指導教官」、民間企業なのに「面接官」。
それから、「官」による「公」の包摂と関係あるのだろうけど、日本語において、「公」はpublicだけではなくofficialも担っている。形容詞としてのofficialは直訳すれば官的。しかし、通常それは公式と訳されている。中国語での一般的な訳は「官方」。例えば、 官方網站(official website)。