現在、基督教の洗礼というのは、顔にちょこっと水をかけるだけであって、プールに全身浸かって行うというのは一部の原理主義者に見られるだけといえるだろう。しかし、古代においてはカトリックにおいても全身水に浸かって洗礼を行っていた。洗礼の簡略化が何時頃から始まったのかはわからない。
出村和彦『アウグスティヌス』*1から387年のアウグスティヌスの洗礼についての記述を引用してみる;
四月二十四日の深夜、復活徹夜祭のミラノ大聖堂はランプやろうそくの光に照らされていた。洗礼堂に入場したアウグスティヌスは、衣服を脱ぎ捨て足下に置くと、洗礼槽に進み入った。当時の洗礼は侵礼が一般的である。司教アンブロシウスによって三度、泉の水にどっぷりと浸され、引き上げられて純白の衣を身にまとう。これまでの罪が洗い清められ、新たに生きる象徴の儀式である。(略)
現在の大聖堂(ドゥオーモ)では、地下に遺跡が公開されていて、階段を降りていくとアウグスティヌスが洗礼を受けた洗礼槽の跡を見ることができる。差し渡し八メートルほどの八角形の干からびたプールは、いまは何も語らない。しかし、一六三〇年前の春の出来事は、歴史の新たな一頁を開くものであった。キリスト者アウグスティヌスの誕生である。(pp.68-69)

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