巨人ファンの人にとって、シンノスケというと、「野原」*1ではなくて、やはり「阿部」なのだろうか。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2015/10/28
- メディア: 文庫
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まあ阿部慎之助というのは、巨人だし、安倍晋三を連想させるし、例えば古寺多見氏*4に向かって、あべしんのすけ! と叫べば、多分パニクってしまうだろう。
もう五年くらい前のことだから、まだいるかどうかはわからないのだけど*2、そのとき我々が東山動物園で見たマレーグマは、読売巨人軍の阿部慎之助捕手に本当によく似ていた。本物の兄弟じゃないかと思うくらい――たぶん違うと思うけれど――顔がそっくり瓜二つだった。僕も吉本さん*3もヤクルト・スワローズのファンだし、決して読売巨人軍に好意を持っているわけではないのだが、その阿部慎之助似のマレーグマはとても愛嬌があって可愛かった。それで吉本さんはそのマレーグマに向かって「おい、しんのすけ、しんのすけ」とずっと呼びかけていた。そのほかいろいろなことを親しげに話しかけていた。なんだか昔の親しい友だちに久しぶりに出会ったみたいに。マレーグマは賢い動物だからむろんそんな無益なことには関わり合いにならず、自分のなすべき作業をクールに続けていた。横にいた若いカップルは気味悪がってすぐ違うところに行ってしまった(気持ちはなんとなくわかる)。(pp.383-384)
*1:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150715/1436886929 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150718/1437241421 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150728/1438066833 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160108/1452225973
*2:このテクストの初出は、『波』2009年9月号。
*3:吉本由美。See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20160420/1461116980