零・卵・愛

堀江敏幸「零度の愛について」(in 『定形外郵便』*1、pp.9-11)


テニスにおける「零度の愛」(p.11)について。


(前略)審判席にはだれも座っていない。ライン上の微妙な判定はたがいの善意でなされ、ポイントがひとつ動くたび、白いウエアの男性が、土なのに芝の大会にこそふさわしい言葉でアナウンスする。フィフティーン・ラヴ、サーティ・ラヴ。英語圏でテニスを覚えたのか、上の歯で下唇を噛むように音を弾き出す《v》の発音が、ややそそっかしいプレーに比してずいぶん丁寧だ。ゲームが進むにつれ、何度かめぐってくるラヴ・フィフティーンの、《v》から《f》への移行が心地よく響く。しかしどこか切迫したところもあって、その「ラヴ」のなかには、零ではなく愛の意味が込められているようにも思われた。(p.10)

「テニスの「ラブ」とはなんのこと?意外な意味と「ラブゲーム」や「ラブオール」の意味を解説!」https://getnews.jp/archives/3416637



曰く、


1つ目が、フランス語で「卵」を意味する「l’oeuf(ロエフ)」が由来であるとする説です。
0と卵の形が似ていることからロエフと言われるようになり、これがアメリカにテニスが渡った際に英語流の発音に徐々に変化したことで「ラブ」と呼ばれるようになったとされます。

また、オランダ語で「名誉」を意味する「lof(ロフ)」が由来とする説もあります。

かつてのヨーロッパではテニスを見ながら賭け事を行うことも多く、その際にお金ではなく「名誉」を賭けることもありました。
名誉という形の無いものと何もないことを掛けてロフとなり、それが変化してラブになったのではないかとする説です。


そして、英語での「love」に「何もない」という意味があったことが由来とする説もあります。
かつて「love」には「nothing(何もない)」の意味があり、何もない状態から始めるという意味で0をラブと呼ぶようになったのではないかと言われています。
毎日新聞校閲センター「なぜ0点が「ラブ」なのか」*2には、第4の説が言及されている;

1点も取れなかった相手に対し「ラブ」とやさしくなだめた

すてきな説ですが、かえってつらいのではと思います。