妙なアフター・サーヴィスなど

朝日新聞』の記事;


「開運商法」巡り寺や宗派を提訴 8700万円賠償請求

2016年8月29日21時42分


「開運商法」で寺院などを提訴して会見する弁護団。ブレスレット購入をきっかけに、祈禱(きとう)料や仏像の代金をだまし取られたと訴えている=東京・霞が関

 ブレスレットなどの「開運グッズ」を購入後、効果が出ないのは悪霊のせいと言われて祈禱(きとう)料などをだまし取られたとして、東京都内などの男女9人が29日、販売業者と提携寺院、それぞれの宗派に、計約8700万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。

 代理人の「開運商法被害弁護団」によると、提携先とみられる宗教法人を訴えるのは異例。宗派についても「寺の不法行為を放置した」と訴えた。

 訴えられたのは「笑福堂」などすでに清算された東京都内の販売業者3社と、「戒徳寺」と「観音寺」(いずれも岡山県高梁市)、それぞれが所属する真言宗御室派京都市)、同善通寺派(香川県善通寺市)など。

 訴状で原告側は、広告を見てブレスレットなどの開運グッズを購入したところ、業者から「効果が出ないのは悪霊のせい」などと脅され、祈禱料や仏像などの代金として約450万〜1600万円をだまし取られた、と訴えている。

 2寺院の代理人弁護士は「名義を利用されたものと考えており、訴訟の中でその旨を主張したい」。御室派は「訴状を見た上で内容を検討したい」、善通寺派は「係争中なのでコメントは差し控える」とした。
http://www.asahi.com/articles/ASJ8Y5CVJJ8YUTIL01Y.html

これは所謂〈霊感商法*1の一種ということになるのだろう。普通イメージされる〈霊感商法〉と違うのは、想像するに、妙なアフター・サーヴィスが関わっているということだろうか。「開運グッズ」の売買が成立して、代金決済が終了した段階で売り手‐買い手関係も終了する筈なのだが、この場合、妙なフォローアップがあったということになる。
さて、「宗派」が訴えられたということだけど、真言宗善通寺派*2は比較的マイナーな宗派ではあるが御室派は宇多院を祖とする仁和寺*3を総本山として、皇室との関係も深い。要するに、怪しげな新興教団が訴えられたというのとは訳が違うということで、けっこう大事だと思うのだが、如何だろうか。そして、日本仏教における「宗派」、また「宗派」の組織というか「宗派」と構成員たる個々の寺との関係がけっして自明なものではないということに気づく。例えば、個々の寺は「宗派」の支店なのか、それともフランチャイズなのか。これはこの訴訟の帰結を左右するのではないかと思う。
それから、寺の主張も紹介されている。「名義を利用された」ということだが、これは「グッズ」販売だけならすんなりと納得できる。しかし、問題になっているものの中には「祈禱料」も含まれている。真言宗などの密教僧の定義のうちには〈加持祈禱する人〉というのも含まれているわけだし、また僧籍のない一般人がいくらお呪いをしても、それを「祈禱」とは言えないだろう。