限りなく透明に近い厭世感

承前*1

土耳古で捕まり日本へ強制送還された男の話。
朝日新聞』の記事;


トルコで拘束の男性「こんなに騒がれるとは」 聴取に

2016年3月25日11時26分

 和歌山県警は25日未明、トルコ南部で軍警察に拘束され、国外退去処分になって帰国した和歌山県内の男性(23)の任意聴取を終えたと明らかにした。男性は過激派組織「イスラム国」(IS)に加わろうとしていたとされるが、聴取に対して「こんなに騒がれるとは思っていなかった」「トルコやシリアには行きません」と語ったという。

 男性は24日夜に関西空港に着き、県警から渡航理由などを聴かれた。男性の携帯電話には、ISとの関係を示すデータは確認されていないという。
http://www.asahi.com/articles/ASJ3T32Z1J3TPXLB006.html

『朝日』の記事はさらっとしすぎだけれど、『産経』はけっこうこってりとした記事を載せている;

2016.3.25 07:45更新
【IS志願邦人拘束】
帰国23歳男性「生活嫌になった、ネット通し…行けば何とかなると思った」 参加は否定「見学のつもり」

 過激組織「イスラム国」(IS)に参加しようとしたとしてトルコ治安当局に拘束され、国外退去処分になった日本人男性(23)が日本政府の事情聴取に対し、シリアに向かった理由について「見学のつもりだった。イスラム国というものを実際に見てみたかった」「研修のつもりだった」と説明していることが24日、分かった。男性は同日夜、関西国際空港着の民間機で帰国し、和歌山県警が任意で事情聴取した。

 政府関係者によると、男性は和歌山県白浜町に居住。ISに参加する意図があったかについて尋ねると「そんなつもりはない」と否定したという。男性にはイスラム過激主義に傾倒するなどの思想的背景はないことも判明。政府関係者は「男性は、シリア入りを安易に考えていたような情報がある」と話した。

 また、和歌山県警によると、男性は「日本での生活がいやになった。インターネットで情報を集めた。渡航前にインターネットを通じてトルコやシリアにいる外国人と連絡を取ったことはなく、行けば何とかなると思った」とも話したという。

 今後、和歌山県警が任意で事情聴取を続け、シリアに向かった動機やきっかけ、仲介者の有無などについて、詳しく事情を聴く。その上で、外国に対し私的に戦闘行為をする目的で準備をしたとする私戦予備・陰謀容疑に当たるかどうかを慎重に見極める。
http://www.sankei.com/west/news/160325/wst1603250020-n1.html


2016.3.25 13:56更新
【IS志願邦人拘束】
帰国男性の聴取打ち切り 携帯にIS関係者と連絡形跡なし 


トルコから国外退去処分を受け、帰国した男性(中央)=24日夜、関西国際空港(村本聡撮影)

 過激組織「イスラム国」(IS)に参加しようとしたとしてトルコ治安当局に拘束され、国外退去処分となって帰国した和歌山県在住の男性(23)が渡航先に持ち込んだ携帯電話に、IS関係者と連絡を取った形跡がなかったことが25日、捜査関係者への取材で分かった。宗教的な思想などをうかがわせる内容もなく、和歌山県警は同日未明に任意での聴取をいったん打ち切った。

 県警は今後、男性の行為が外国に対し私的に戦闘行為をする目的で準備したとする刑法の私戦予備・陰謀容疑に当たるかどうか慎重に見極めるが、計画性が乏しく犯罪の嫌疑はないとみている。

 捜査関係者によると、男性は母親に「1人で旅行に行ってくる」と告げた翌日の今月15日に出国。帰国後の24日夜から25日未明にかけて県警が行った聴取では、トルコへの渡航方法について「インターネットで情報を集めた」と話す一方、「事前にトルコやシリア国内のIS関係者とは連絡を取っていない」と説明した。

 実際、県警が渡航時に所持していた携帯電話を調べたところ、IS関係者と連絡を取った形跡はなかったことが判明。「行けば何とかなると思った」とも話しており、県警は計画性に乏しく、短絡的な渡航だったとみている。男性は「こんなに騒がれるとは思っていなかった」とも話しているという。

 男性は聴取自体には素直に応じたが、動機については不明確な部分が多く、「ISに加わりたかったとも、ただの旅行者として渡航したともとれるような曖昧な話を繰り返すなど、話が二転三転している」(県警幹部)という。
http://www.sankei.com/west/news/160325/wst1603250060-n1.html

感じられるのはすごく稀釈された厭世感のようなもの。2014年に世間を騒がせた北海道大学*2よりもさらに稀薄な感じ。序でにいうと、若い世代にとって、〈シリア〉というのは〈三原山〉や〈青木ヶ原〉と機能的に等価なのだろうか。
男の言明が「二転三転している」ほか、土耳古の警察の主張と日本の警察の主張が食い違っているなど、曖昧さの塊なのだが、この男性は全国区的には、或いはネットの世界では急速に忘れられていくのだろう。そして、ちょっぴりの後悔が入り混じった長い余生。
村上龍とは全然関係ない*3
限りなく透明に近いブルー (講談社文庫)

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