皮肉な生存確認

シリアに渡り、ISISに捕獲され、生死の程も明らかではなかった湯川遥菜氏*1の生存がきわめて皮肉な仕方で確認されてしまった。
『毎日』の記事;

イスラム国邦人人質:日本人2人殺害を警告 ネットに映像

毎日新聞 2015年01月20日 16時19分(最終更新 01月21日 01時28分)


 ◇日本政府に72時間以内に身代金2億ドル要求

 【カイロ秋山信一】内戦が続くシリアと、イラクの一部地域を勢力下に置くイスラムスンニ派の過激派組織「イスラム国」とみられるグループが20日、日本人男性2人を拘束している映像と共に、日本政府に72時間以内に身代金2億ドル(約236億円)を支払わなければ殺害すると警告するビデオ声明をインターネット上に公開した。2人は昨年8月、シリア北部でイスラム国に身柄を拘束された千葉市の湯川遥菜さん(42)と、昨年10月シリアに入国したとされる仙台市出身のジャーナリスト、後藤健二さん(47)とみられる。

 菅義偉官房長官は、ビデオが公開された直後の午後2時50分ごろに政府として確認したと説明しており、身代金の支払期限は日本時間23日午後とみられる。

 ビデオは約1分40秒。「日本政府と日本国民へのメッセージ」との字幕とともに、キューバにあるグアンタナモ米海軍基地のテロ容疑者収容所の収容者が着せられているのと同じオレンジ色の上着を着た男性2人が砂漠でひざまずき、後ろで黒ずくめの服で、黒い頭巾で顔を隠した男が英語で日本政府への2億ドルの要求を突きつけた。2人の脇にはそれぞれ「KENJI GOTO」「HARUNA YUKAWA」と名前がテロップで表示され、男が英語で話す「警告」をアラビア語に翻訳した字幕が流れた。2人は終始無言だった。

 男は安倍晋三首相に呼びかける形で「私たちの女性や子どもを殺し、イスラム教徒の家を壊すために1億ドルを拠出した」と日本を一方的に非難。さらに「イスラム国の拡大を止めるためにムジャヒディン(イスラム聖戦士)と戦う背教者の訓練に1億ドルを拠出した」として要求額を1億ドル上乗せした。ナイフをかざしながら身代金支払いの期限を「72時間」と指定し「もしそうでなければ、このナイフがお前たちの悪夢になる」と警告した。

 画面左上には昨年、米国人らを殺害した様子を公開したビデオにも表示されていた「イスラム国」の映像部門のロゴマークがあった。AP通信は、男の英国なまりの英語から、欧米人人質を殺害したビデオに登場する英国人とみられる戦闘員に似ていると指摘した。
http://mainichi.jp/select/news/20150120k0000e030220000c.html

シリアの反体制派武装組織の戦闘員によると、湯川さんとみられる男性は、昨年7月下旬にトルコ経由でシリアに入国。反体制派部隊に同行していたが、同年8月14日にシリア北部アレッポ郊外で「イスラム国」に拘束されたとみられる。拘束時の映像はその後、ネット上に公開された。拘束直前まで同行していた反体制派武装組織「イスラム戦線」が解放交渉を続けていた。渡航目的は不明だが、「人道支援目的」と周囲に語っていた。

 一方、後藤さんは昨年10月に取材のためシリアに入った。後藤さんが投稿したとみられるツイッターなどには、トルコからシリアに入る様子(同10月2日)が映っている。また、シリア反体制派によると「ゴトウ」を名乗る日本人記者は「イスラム国の活動地域に行きたい」とアレッポ東方に向かったが、同10月25日を最後に連絡が取れなくなったという。政府関係者によると昨年11月、「イスラム国」側から後藤さんの家族に約10億円の身代金を要求するメールが届いていたという。

 イスラム国は外国人を拉致して欧米各国に空爆中止や身代金を要求。この1年間で5人の欧米人殺害の映像を公開。また、昨年だけで20億円以上の身代金を獲得したとの分析もある。

 イスラム国の前身組織は2004年、イラク駐留米軍打倒を掲げて結成。同年には、香田証生さん(当時24歳)を拉致して殺害。一時、弱体化していたがシリア内戦に参戦して勢力を盛り返した。昨年2月にはシリアからの撤退命令を拒絶したとして国際テロ組織アルカイダから断絶された。昨年6月にはシリアから越境し、イラク西部や北部地域を制圧。米軍などは8月以降、空爆を続けている。
http://mainichi.jp/select/news/20150120k0000e030220000c2.html

See also


Shiv Malik, Justin McCurry and Martin Chulov “Islamic State video threatens lives of two Japanese hostages” http://www.theguardian.com/world/2015/jan/20/islamic-state-video-japanese-hostages-jihadi-john
Simon Tisdall “Isis threat to Japanese hostages exposes risk in Abe’s counter-terror strategy” http://www.theguardian.com/world/2015/jan/20/japanese-hostages-threatened-by-isis-risk-abe-counter-terror
韓梅「”伊斯蘭国”威脅殺害日本人質 日本称不譲歩」http://military.cnr.cn/gz/20150120/t20150120_517478862.html
六辻彰二*2イスラム国による日本人人質殺害予告−背景とタイミング」http://bylines.news.yahoo.co.jp/mutsujishoji/20150120-00042405/
木村正人*3イスラム国が日本人2人を人質 試される積極的平和主義 人命も、テロ対策も」http://bylines.news.yahoo.co.jp/kimuramasato/20150120-00042404/
青島顕、近藤綾加、高島博之、関谷俊介、中里顕、荻野公一「イスラム国邦人人質:「生きて帰って」関係者に祈り」http://mainichi.jp/select/news/20150121k0000m030132000c.html http://mainichi.jp/select/news/20150121k0000m030132000c2.html


後藤健二*4は、気づかなかったが、昨年8月に湯川失踪が明らかになったときに、メディアに登場して、湯川氏との接触を語っていたんだね*5
後藤氏については例えば、


キタキタ親父*6「「インデペンデント・プレス」ジャーナリスト後藤健二さん イスラム国に拘束されていた #イスラム国」http://matome.naver.jp/odai/2142173579724441501
「 中東、紛争地のプロフェッショナルがなぜ? あの後藤健二さん、イスラム国に拘束情報に衝撃広がる」http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150120-00000007-jct-soci
「【インタビュー】国際ジャーナリスト・後藤健二〜それでも神は私を助けてくださる〜」http://www.christiantoday.co.jp/articles/13401/20140530/goto-kenji.htm


最後のは昨年5月の記事。後藤氏が敬虔なクリスチャンであること。


今回の人質事件とは直接関係ないが、ISISを巡って、興味深い記事があったので、メモしておく;


イスラム国:少年が男性2人を射殺…ネットに動画公開

毎日新聞 2015年01月14日 01時32分(最終更新 01月14日 01時35分)


 【カイロ秋山信一】AFP通信などによると、シリアやイラクで活動するイスラム教過激派組織「イスラム国」は13日、構成員とされる少年が、男性2人を「ロシアのスパイ」と非難して射殺する新たな動画をインターネット上で公開した。動画の信ぴょう性は不明。

 ◇「ロシアのスパイ」

 少年は10歳に満たないとみられ、以前イスラム国が宣伝用に作成し公開したカザフスタンでの少年兵訓練の映像に登場していた。

 男性は射殺される前、ロシア語でイスラム国に潜入したロシアの情報部員であることを認めた。男性の一人はカザフスタン出身であることを明かした。もう一人の男性の国籍は不明だが、「情報を提供するごとにロシア当局から報酬を受け取っていた」と話した。

 動画では、少年は冷静な様子で右手に拳銃を持ち、ひざまずいている男性たちに近づき、後頭部めがけそれぞれ1発ずつ発砲。倒れ込んだ男性にさらに数発銃弾を撃ち込んだ。

 ロシア通信によると、ロシア連邦保安庁(FSB)当局者は同日、動画について「コメントしない」と述べた。
http://mainichi.jp/select/news/20150114k0000m030122000c.html


イスラム国:規律低下…イラクで戦闘長期化、内紛や脱走者

毎日新聞 2015年01月20日 20時27分(最終更新 01月20日 23時22分)


 【カイロ秋山信一】日本人とみられる2人を人質に取り、殺害を警告したイスラム過激派組織「イスラム国」の内部で最近、内紛や脱走者が相次いでいたことがイラク北部の住民の証言などで分かった。昨年6月以降、イラクとシリアで勢力を伸ばしてきたイスラム国だが、戦闘が長期化する中で士気や規律が低下している可能性がある。

 イラク北部では実効支配地域の住民を強制的に徴兵する動きも出ている。近く本格化するとみられる政府側の攻勢に備えて、部隊の立て直しを迫られている模様だ。

 一方、イラクで今月、クルド自治政府の治安部隊ペシュメルガの訓練を行っているカナダ軍特殊部隊が、イスラム国から攻撃を受け、銃で応戦したことが19日、判明した。米軍主導の有志国連合は昨年8月にイスラム国への空爆を開始し、政府軍やペシュメルガへの訓練も進めてきたが、現地に派遣している米欧諸国がイスラム国と地上で交戦したのは初めてとみられる。

 イラク北部モスルの住民やイラクメディアによると、モスルでは昨年12月、任命されたばかりのイスラム国の「知事」が内通の疑いをかけられて処刑された。シリア東部デリゾール県でも今月、「知事」人事を巡って抗争が起きた。本拠地があるシリア北部ラッカでは、逃亡を図った外国人戦闘員約100人が処刑された。

 こうした中、イラク北部の農村部では、若い住民らを戦闘要員として徴集する動きが強まっている。タルアファル近郊の村では徴兵を拒まれたため、村を攻撃し、3人を殺害。約250人を捕虜にした。イスラム国は従来、複数のメンバーの推薦がなければ、新規に戦闘員を加えることはなかった。だが政府側の攻撃が強まるとの観測が広がる中、戦闘要員の確保を急いでいるとみられる。

 ただ、政府側も軍の再編に手間取っており、実際に攻勢に出られるかは不透明だ。昨年6月にイスラム国が大規模侵攻を始めた際、政府軍はほとんど反撃せずに敗走を重ねた。9月に就任したアバディ首相は、汚職容疑で数十人の軍幹部を更迭するなど立て直しを図っている。
http://mainichi.jp/select/news/20150121k0000m030081000c.html

情勢の変化(進展)については何も伝わってこない。しかし、何時自衛隊を使うの? 今でしょ!という熱湯浴の雄叫びや、自己責任、自己責任、自己責任……という阿呆陀羅経の合唱だけは聞こえてくる。