「クソコラ」と「自己責任」の間

承前*1

「72時間」は迫っている。
シリアではなく日本のネット世界の話。
J-CAST ニュース』の記事;


イスラム国、ツイッターの「クソコラ画像」に激怒? 「2人の首を刎ねた後、お前たちの顔を見てみたいものだ」
2015/1/22 13:40


イスラム過激派組織「イスラム国」が日本人2人を人質に取ったが、ツイッター上では「イスラム国」の公開した画像を加工して揶揄するような動きが起こっている。

「ISISクソコラグランプリ」というハッシュタグとともにこれまで数多くの「作品」が公開された。2人の顔と覆面の「イスラム国」関係者の顔を入れ替えただけのものや、日本の人気アニメやテレビ番組に登場する人物の顔をはめ込んだもの、吹き出しをつけたもの、背景を東京スカイツリーや富士山に変えたものまで多種多様だ。


「ただRTを稼ぐことが俺らの目的」

そんな中、「イスラム国」関係者とみられるアカウントが「ISISクソコラグランプリ」のハッシュタグを使い、

「Japanese people,You are so optimistic Is it because he said 5800 kms you think you are in safe zone. We have army everywhere(日本人よ、随分と楽観的だな。5800キロ離れた安全地帯にいると思っているのか。我々は世界の至る所に兵士を抱えているぞ)」
「I really want to see your faces after these two get beheaded.(2人の首を刎ねた後、お前たちの顔を見てみたいものだ)」

とツイートした。

これをうけ、一部が

「すげーおこってるぞ」
「やっていいこととやってはいけないことの分別も付けられないのか」
表現の自由を勘違いしないでほしい」

などと「クソコラ画像」の流行を批判する一方、

「俺はいいと思うケドね。テロの恐怖を笑い飛ばす」
「まあアッラームハンマドコーランさえ侮辱しなければ穏健なムスリムも多少は大目に見てくれるだろうと信じたい」
「ただRTを稼ぐことが俺らの目的」

と好意的な見方も出た。

ちなみに先述のツイートをした「イスラム国」関係者とみられるアカウントは現在削除されている。
http://www.j-cast.com/2015/01/22225907.html


「身代金、自分で払わせれば良い」「危険承知していた」 拘束された2人にネットで吹き荒れる「自己責任論」
2015/1/21 18:31


イスラム国」を名乗る集団から殺害が警告されている湯川遥菜さんと後藤健二さんに対し、ネットでは「自己責任論」が噴出している。

2004年、紛争地だったイラクで日本人3人が武装勢力の人質となった当時を思い起こさせる状況だ。


後藤さんは「責任は私自身に」と話していた


2人がイスラム国に拘束されるまでの経緯は2015年1月21日現在はっきりしないが、これまでの報道をまとめるとシリア入りの目的が少しずつ明らかになってきた。

北部アレッポで拘束された動画が8月に公開されて以降、消息が分からなくなっていた湯川さんに関して、軍事会社の関係者は「実績が作りたかったのではないか」などと各紙の取材に答えている。一方の後藤さんは、知人で現地ガイドの男性が「友人の湯川さんの情報を得るために行った」と話しているとし、救助のために現地入りしたと各紙が報じている。

2人は現地での危険を認識していなかった訳ではない。湯川さんは最後の更新となった7月21日のブログで「今までの中で一番危険かもしれない」と書いた。後藤さんも、ガイドの男性が撮影したという動画の中で「これからラッカ(シリア)に向かいます。どうかこの内戦が早く終わってほしいと思っています。何が起こっても、責任は私自身にあります」と話している。

しかし結果は人質として拘束され、日本政府には計2億ドルという法外な身代金が要求されることとなった。ツイッターをはじめ、ネットでは「そもそも行くなって言われてんのに行ったのは自己責任でしょ」「もし払うなら自己責任は明白なので自分で払わせれば良い。危険地帯を承知で出かけているのだから」と「自己責任論」が吹き荒れている。

「拘束された奴の命がどうなろうと、現地へ行った奴の自己責任なんだからほっときなよ」という書き込みや、「そもそも後藤、湯川両氏はイスラム国と意を同じくしているのではないか?とすら思う」「捕まったやつはイスラム国の仲間で日本から資金得るため演技してんだよ」とイスラム国と共謀した自作自演を疑う人までいる。


「『自己責任』という言葉を使わないことを願う」

同様の見解をする著名人もいる。タレントのフィフィさんは「この時期にあの地域に入るのには、それなりの覚悟が必要で自己責任」とツイート。元衆院議員の渡部篤氏は、2人について「日本政府が要請してシリアに行ったのではない」と突き放す。「冷酷かもしれないけど、イスラム国のテロに屈してはならない。ここで妥協すれば、世界中の日本人がテロに狙われることになる」と持論を書いた。

被害者に批判的な「自己責任論」は、04年にイラクで日本人3人が拘束された当時と似通っている。外務省から渡航自粛勧告が出されていたにもかかわらず現地入りした3人へ批判は強く、今回と同様に共謀説も飛び出した。

当時の関係者は今回の事件についてツイッターで見解を示している。被害者の弁護団だった神原元弁護士は「あのとき、政府関係者が『自己責任論』を唱え、日本社会は被害者家族へのバッシングに覆われた。あれは狂気だった。狂気にとりつかれるな。被害者とその家族をサポートせよ!」という。

18歳で拘束され、現在NPO法人の共同代表を務めている今井紀明さんは「今回の人質事件で『自己責任』と彼らを切り捨ててはいけないことだと思う。海外では様々なことが起こりえる、守られていても殺される時だってある。どんな人でもあっても切り捨てず、最後まで国は対応してほしい。そして国の関係者が『自己責任』という言葉を使わないことを願う」としている。
http://www.j-cast.com/2015/01/21225847.html?p=all

湯川氏は基本的に熱湯浴な人だと思ったけれど*2、それでも容赦ないのか。熱湯浴諸君は覚悟を決めているのだと思う。自分が何か災難に遭遇しても、仲間は慰めや励ましではなく嘲りとバッシングと「自己責任」の斉唱で応えてくれるということを。また、(犯人が寛大だった場合には)ネットで「クソコラ」を見るのが現世最後の愉しみになるということも。そういう覚悟にはやはり畏敬の念を抱くべきだろう。


「「交渉できるならイスラム国に行く用意がある」中田考氏がメッセージ(スピーチ全文)」http://www.bengo4.com/topics/2582/
「「72時間は短すぎる。もう少し待ってくれ」  イスラム学者中田氏、アラビア語イスラム国に呼びかけ」http://www.j-cast.com/2015/01/22225906.html?p=all
林哲平「イスラム国拘束:中田元教授「イスラム国に行く用意ある」」http://mainichi.jp/select/news/20150122k0000e040190000c.html


中田考氏登場。中田カードが日本政府にとって最も現実的という可能性もある。記事のタイトルからはわからないが、中田提案の要諦は、身代金の代わりに赤新月社を通じての人道支援を、ということだろうが、それを双方が呑むかどうか、或いは国際社会が納得するかという問題。
さて、韓国人もISISを目指すという『毎日』の記事;


韓国:不明男性がイスラム国側と連絡…警察当局

毎日新聞 2015年01月22日 12時15分(最終更新 01月22日 16時18分)


 【ソウル澤田克己】韓国警察当局は21日、シリア国境に近いトルコ南部キリスで消息を絶った韓国人男性(17)が昨年10月、イスラム過激派組織「イスラム国」の関係者と見られる人物とツイッターでやりとりしていたことを明らかにした。

 韓国メディアは、男性の年齢を18歳と報じていたが、17歳という。男性がイスラム国に参加するためシリアに向かった可能性がある。

 警察は、自宅に残されていた男性のパソコンを解析した。解析結果によると、男性は昨年10月4日、ツイッターに英語で「イスラム国に参加したい」と書き込み、翌5日に「トルコへ行け」と返信した人物がいた。2人は約110回のやりとりの後、会話内容の追跡が難しい別のネットサービスに移動した。

 一方、男性はトルコに同行した知人に、キリスで投宿したホテルの向かいにあるモスク(イスラム礼拝堂)を、ネットで知り合った友人に教えてもらった「最終目的地」だと話していた。聯合ニュースによると、男性が別の男と一緒に車に乗り込む姿が、現場の防犯カメラに映っていた。
http://mainichi.jp/select/news/20150122k0000e030180000c.html