
- 作者: 大井邦明,加茂雄三
- 出版社/メーカー: 朝日新聞
- 発売日: 1992/10
- メディア: 単行本
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加茂雄三「一六世紀から二〇世紀まで」(in 大井、加茂『ラテンアメリカ 地域からの世界史16』*1、pp.109-218)からメモ。
「ラテンアメリカ」におけるカトリックの先住民を対象とした布教活動は、布教のターゲットである先住民人口が伝染病や強制労働のために激減したこともあって、16世紀後半になると、衰退し、宗教活動は寧ろ白人社会の秩序維持に力点が置かれるようになる(pp.130-131)。
例えば墨西哥の「グアダルーペの聖母」の物語;
宗教活動の中心が、先住民の改宗から白人社会の維持に移行したことは、一六世紀半ばにインディアスに正式に移植された異端審問のあり方にも反映していた。異端審問所は、先住民を異端審問の対象とせず、ユダヤ教やプロテスタンティズムなど白人社会での「邪教」、「異端」の根絶をめざしていた。その結果、キリスト教化されたとみなされていた数百万の先住民については、その多くは外面的なものにとどまり、内面的にはキリスト教から見れば異端的なものであるはずの土着の宗教の要素をそのまま残して、むしろキリスト教とそれらの土着宗教が融合していくのを容認したのである。(p.131)
フォーク・カトリシズムについては、http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20061009/1160391996 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131128/1385657066で言及している。
(前略)一五三一年に一農夫の前に聖母マリアが現れ、テペヤクの丘(アステカの母神トナンツィンの神殿があった所で、現在グアダルーペ寺院が建っている)に聖堂を建てるよう司教に伝えよと頼み、農夫のマントに聖母像を写したというのがそれである。グアダルーペの聖母マリアは黒髪に褐色の肌で、先住民の容貌をしている。(p.132)