- 作者: 大井邦明,加茂雄三
- 出版社/メーカー: 朝日新聞
- 発売日: 1992/10
- メディア: 単行本
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加茂雄三「一六世紀から二〇世紀まで」(in 大井、加茂『ラテンアメリカ 地域からの世界史16』*1、pp.109-218)
少しメモ。
19世紀後半のラテン・アメリカを巡って曰く、
誰?
一方、この時期には大土地所有化の進行とともに、農民からの合法的、非合法的な土地の奪取が進み、メキシコや中米、アンデス諸国などでは土地を失った農民が増大した。新たに生まれつつあったプロレタリアートたちも劣悪な条件下で働かされた。こうして農民も労働者も、輸出経済発展の恩恵にはほとんど浴することなく、依然として厳しい条件の下で働き、生活しなければならなかった。メキシコでは、ハーバート・スペンサーの社会ダーウィン主義の影響を受けた知識人のなかで、先住民を劣悪視し、白人の優越を説いて、遅れた、貧しい、習慣の異なった多数の先住民の存在がメキシコの発展にとって大きな障害になったいるのだと、主張する者もいた。(p.186)
今度はオーギュスト・コント。ラテン・アメリカにおけるコント受容の前提として、19世紀後半の伯剌西爾、アルヘンティナ、墨西哥、ベネズエラ、グアテマラ、エル・サルバドル、コスタリカなどでは、政治における独裁または寡頭制支配、経済における自由主義の組み合わせが採用されていたことを理解しなければならない(Cf. p.180)。
これらの国々の政府は自由主義的な経済政策を用いて、欧米諸国からの資本や技術を導入し、またアルゼンチンやブラジルのように、南ヨーロッパ諸国から大勢の移民を引き寄せることによって、輸出経済の発展に努め、それによって欧米をモデルとした近代化を達成しようとした。当時、これらの国々のエリート知識人や政治家に強い影響を及ぼしたのは、フランスの社会学者オーギュスト・コントの実証主義思想で、彼らはその思想の柱である「秩序と進歩」をスローガンとして掲げ、寡頭支配階級による支配の安定と、そのもとでの経済の発展や物質的進歩を追求していった。(pp.180-181)
*1:Mentioned in http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20150715/1436925830