特許は誰のものか問題

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20140905/1409876113


特許庁は、企業で新しい技術を発明した際の特許の権利について、産業界からの要望を受けて、発明した社員に対する報酬を法律で担保することを条件に、社員ではなく企業に帰属させるよう制度を変更する方針を固めました」というNHKの報道を引く*1。さらに、『企業法務ナビ』の2つの記事が引用されている*2特許権を個人から召し上げるという「方針」というのはブルジョワ民主主義の超克を目指す安倍晋三の思想*3と平仄が合ってるんじゃないかと反射的に思ってしまったのだが、如何だろうか。
それはともかくとして、高橋真理子という朝日の人が「青色発光ダイオード裁判で中村修二氏の代理人を務めた升永英俊弁護士」への取材に基づいて書いた「「社員の発明は会社のもの」に?それはないでしょう」という記事を読んだ*4。これを読むと、特許権を企業側に帰属させている主な国としては、瑞西、英国、仏蘭西露西亜和蘭、中国がある。特に瑞西は凄い! 「「使用者は雇用契約により、従業者によるすべての発明の権利が与えられる」とスイス債務法に定められている」。「すべての発明の権利」だよ! 米国では日本の現行法と同様に法律上は個人に帰属しているが、実際には企業に取られてしまうようだ。曰く、


米国では、職務発明について法律上の取り決めはないが、特許の権利はつねに発明者に帰属するという意味では、日本と同じ発明者主義だ。しかし、職務発明という概念はなく、従業者が発明した場合にどうするかは雇用契約に委ねられる。一般的には、対価込みの給与額が示されることが多いという。

対価込みの給与ということは、発明をする人には高い給与を払うということだろうと思っていたら、「とんでもない」と中村修二氏の裁判の代理人である升永英俊弁護士に一喝された。「就職するときは、全員が権利を会社帰属にする契約書にサインしている。どこの国でも就職したい人は会社の言うことを拒否できませんよ」。升永さんは、米国の弁護士から「従業員に発明の超過利益の一部を分配する日本方式は素晴らしい」と言われたという。

ところで、問題は法律的であるよりも経済学的であるような気がする。また、発明者個人か企業かという単純な関係だけでもないだろう。

実は、職務発明に対する妥当な対価の計算方法が、日本ですでに提案されている。『水俣病の科学』(日本評論社、2001年、共著)で毎日出版文化賞を受けた化学工学者の西村肇東大名誉教授が、中村裁判の地裁判決が出た後、高裁の和解が出る前に書いた『人の値段 考え方と計算』で、具体的な方法を詳しく説明しているのだ。

発明者に渡すべき対価は、「発明によって得られた(=発明がなければ得られなかった)超過利益」×「その利益を得るにあたっての発明者の貢献度」を計算すれば出てくるという原則論は、誰もが納得する。問題は、超過利益と貢献度をそれぞれどうやって計算するか、だ。

やはり岩井克人先生*5辺りにコメントを求めるのがよろしいようだ。

書き忘れた。
東京特許許可局安倍晋三は多分言えないよ。トーキョートッキョキョキャキョク。これで安倍晋三をいじめる野党議員はいないのか。