http://d.hatena.ne.jp/sheepsong55/20131121/1385041077
晶文社から出る「吉本隆明全集」の内容見本の話。このエントリーを初めて読んだとき、本そのものではなく内容見本がエントリーのネタになるって珍しいんじゃないかと思った。まあ、私も以前内容見本をネタにしたことはあるのだが*1。
本屋にあったので、その内容見本を私も取ってきた。この内容見本には、吉本隆明*2のお嬢様方である、ハルノ宵子とよしもとばななのほかに、鶴見俊輔、上野千鶴子、福島泰樹、糸井重里、鷲田清一、中沢新一、見城徹が文章を寄せている。
例えば、鶴見俊輔;
上野千鶴子は「吉本の前に吉本はなく、吉本のあとに吉本はいない」という−−
戦時下の体験を戦後もしっかりと持ち続ける。そこに吉本隆明の特色と力強さがあった。
戦後まもなく、学生だった吉本が「春の枯葉」の上演許可を求めて太宰治に会いに行ったのも、彼が太宰の中に同質のものを読み取っていたからだろう。自宅には不在で、教えられた行きつけの飲み屋に行くと、果たして太宰が居た。そこで上演許可をもらい、しばらく雑談した。
戦時中に太宰の作品に出会い、講演の依頼で二度ほど太宰のもとを訪ねた。あいにく二度とも留守だったため、私はあきらめて帰った。運不運もあるが、その場で吉本のような才覚と機転を、私は持っていなかった。
(「才覚と機転」)
全集の構成は、主題を問わず、また詩と評論、講演を問わず、古い順に収録していくということになるようだ。また、対談や座談会は含まれていないようだ。
彼は戦後の反体制運動のなかで扇動者の役割を果たしたり時局発言をしたりしたが、また大衆消費社会に迎合したとも言われたが、そしてオウム事件の時には麻原彰晃を擁護したり反原発運動に対立したりというフライングを犯したりもしたが、そういうふるまいの瑕疵はかれの業績を傷つけない。
というのも、彼ほどラディカルに――根底的に、という意味だ――言語について、国家について、共同体について、家族について、性愛について、心的現象について、信仰についてかんがえた者がほかにいただろうか? 「理論不毛の地」と言われたこの国で、どんな外来の思想にも頼らず、徒手空拳で自前のことばで考えぬいた。
(「空前絶後の思想家」)
*1:http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070530/1180549562
*2:See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20050705 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20050819 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060227/1141008207 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060605/1149478230 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070105/1167974950 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080130/1201705768 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080305/1204690984 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090213/1234550817 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090322/1237741323 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091120/1258696685 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100130/1264834811 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110202/1296628031 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110212/1297527735 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110709/1310185825 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110710/1310272673 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110711/1310400277 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110713/1310486787 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110718/1310962569 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110722/1311261926 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20110825/1314210338 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120107/1325897887 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120316/1331898804 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120322/1332376701 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120529/1338312298 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20120927/1348755638 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130129/1359438129 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130313/1363141131 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130425/1366912936 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130515/1368634116 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20130830/1377790785 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131009/1381348641 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131101/1383270529 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20131108/1383873218