「別種」

周維揚、丁浩(選注)『杜甫草堂詩選』(四川文藝出版社、2003)は成都滞在中の杜甫の詩文を集めたもの。
その中の「戯題王宰画山水図歌」。王宰という画家の絵に題したもの。


十日画一水、五日画一石。
能事不受相促迫、王宰始肯留真迹。
壮哉崑侖方壷図、挂君高堂之素壁。
巴陵洞庭日本東、赤岸水與銀河通、
中有雲気随飛龍。
舟人漁子入浦漵、山木尽亜洪濤風。
尤工遠勢古莫比、咫尺応須論萬里。
焉得并州快剪刀、剪取呉淞半江水。
(p.37)
さて、この中の「巴陵洞庭日本東、赤岸水與銀河通、/中有雲気随飛龍」。王宰の描く水の勢いは湖南の洞庭湖から一気に日本まで東に下り、さらに舞い上がって銀河に届いてしまうくらい凄いという感じか。「日本」に対して、

即今日本国。《旧唐書・東夷列伝》:”日本国者、倭国之別種也。以其国在日辺、故以日本為名。”(p.38)
と註されている。前々から気になっていたのだけれど、別名や別称ではなく「別種」ということは、「倭国」と「日本国」は違う(と、少なくとも当時は認識されていた)ということなのだろうか。なお、「赤岸」も日本を意味する。枚乘「七發」の「凌赤岸、彗扶桑」に由来する。EnglandをAlbion(白)と呼ぶのはあのドーヴァーの岸壁から来ているのだろうけど、日本における赤い岸壁って何処? 中国大陸側から見てということなので、九州或いは日本海側ということになるのだろうけど。
杜甫といえば、高島俊男李白杜甫』を読んだのは何時頃だったか。
李白と杜甫 (講談社学術文庫)

李白と杜甫 (講談社学術文庫)