期待外れかも

天皇誕生―日本書紀が描いた王朝交替 (中公新書)

天皇誕生―日本書紀が描いた王朝交替 (中公新書)

遠山美都男『天皇誕生』という本を20年近く前に買って、読んでいたということを忘れていた。
さて、この本のサブタイトルは「日本書紀が描いた王朝交替」。しかし、藤原不比等の陰謀! という人*1にとっては期待外れだろう。何しろ、古田武彦という名前は、参考文献のリストの中に含まれていないのだ。この本において遠山氏が批判の対象としているのは『騎馬民族国家』の江上波夫や、遠山氏が「今日の目から見ると、『古事記』『日本書紀』と『魏志倭人伝などの中国資料を自在に、かつ短絡的に結びつけ、このように大胆な歴史的展開を推測し、それが序呪できる時代があったことに、正直いって、ある種の羨望すら覚える」と書く(pp.12-14)水野祐である。

騎馬民族国家―日本古代史へのアプローチ (中公新書)

騎馬民族国家―日本古代史へのアプローチ (中公新書)

1パラグラフだけ引用しておく;

要するに六世紀以前は、王位が血統によって継承されておらず、王にふさわしい人格・資質の持ち主をもとめ、王位が複数の血縁集団のあいだを移動していた段階なのである。特定の一族から倭国王が選出されたとしても、わずか数代なのだから、これではとても世襲とはいえない。ともかく、血統による世襲という観念が未成立であった以上、そこに王朝の概念を通用することは不可能なのである。(pp.21-22)