メメント・モリはしたか

7月の東京都足立区における〈即身成仏〉発覚*1以来、死んでいたけれど諸般の事情で生きていたことになっていた高齢者(の暴露)が大流行のようではある。
東京都大田区の事件についての記事をちょっと集めてみた。
先ずは『東京新聞』;


104歳女性?の白骨遺体 長男『9年前に死亡』

2010年8月20日 13時50分

 全国で高齢者の所在が不明となっている問題で、東京都大田区が、生きていれば百四歳の三石菊江さん=同区羽田四=について調べたところ、長男(64)が「母親は約九年前に死亡した」と話し、自宅アパートから白骨化した遺体が見つかっていたことが二十日、同区と蒲田署への取材で分かった。同署はDNA型鑑定などで身元確認を進めるとともに、長男が年金を不正に受け取っていた疑いもあるとみて調べる。

 区は高齢者の所在不明問題を受け、区内の百歳以上の二百七十六人を調査。職員が十八日午後、三石さん宅を訪ねると、長男が「母親は二〇〇一年六月、九十五歳の時に病気で死亡した。葬儀代が払えないので死亡届は出していない。骨は持っている」と話した。区の通報を受けた蒲田署員らが十九日、三石さん宅で遺体を発見。白骨化した遺体は、リュックサックの中に入っていた。

 区などによると、長男は〇四年五月、母親と一緒に文京区から大田区に転入届を提出。長男は「文京区に住んでいたころ、遺体はしばらく押し入れに入れていた。骨を砕いてリュックに入れ、引っ越しの際に持ってきた。引っ越す前までは母親の年金を受け取っていた」と話している。

 文京区によると、年金の受給は不明。大田区によると、年金は支払われていなかったが、区の敬老祝い金(五万円)は、昨年までの三年間、現金書留で郵送していた。
http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2010082090135002.html

『朝日』;

長男「年金は生活の糧」=「金づちで骨割った」とも―104歳女性?遺体・警視庁

2010年8月21日14時6分



 東京都大田区のアパートで104歳とされる三石菊江さんの所在が確認できず、白骨遺体が見つかった事件で、長男(64)が警視庁蒲田署の事情聴取に、三石さんの年金について「生活の糧だった」と話していることが21日、同署への取材で分かった。

 長男は「いけないことだったと思う」とも述べており、同署は詳しい経緯を調べている。

 同署によると、長男は「母は2001年6月12日ごろ、病気で死亡した」と説明。文京区大塚から大田区羽田に転入した04年5月ごろまで約3年間、三石さんの老齢福祉年金計約120万円を不正に受け取った疑いがある。

 文京区では定期的に届く年金の受取書類を郵便局に持ち込み、現金を受け取っており、長男は「職がなく、年金が生活の糧だった」と話している。

 大田区では年金を受給しておらず、「書類が届かなくなり、働き始めて収入があったので、自動的に止められたのかと思った」と説明している。

 長男は転入後、解体業者の下で働き、失業した07年ごろから生活保護を受けていた。白骨遺体の発見時、長男名義の金融機関の口座に残高はほとんどなかった。

 長男は「金づちで骨を割った」とも話しており、転入の際に白骨遺体を砕いてリュックサックに入れて運搬。「金づちは文京区の自宅に置いてきた」としているが、既に取り壊されており、金づちは見つかっていないという。 


時事通信社
http://www.asahi.com/national/jiji/JJT201008210036.html

『読売』;

「104歳」の長男、年金は生活費に充てた

 東京都大田区のアパートで住民登録上「104歳」の三石菊江さんとみられる白骨遺体が見つかった問題で、長男(64)が警視庁に対し、三石さんの死後に受給した三石さん名義の老齢福祉年金について、「生活費に充てていた」と話していることが21日、捜査関係者への取材でわかった。


 長男は三石さんが死亡したとみられる2001年6月から大田区に転居する04年5月までの約3年間、計約120万円の年金を受給しており、同庁は詐欺罪の公訴時効(7年)にならない約27万円について立件を検討している。

 捜査関係者によると、長男は「(母は)01年6月12日に文京区の自宅で病死したが、葬式代がなかった」などと説明。当時、定職がなく、家賃を滞納するなど困窮しており、大田区に転居した04年5月までの約3年間、三石さん名義の年金だけで生活していたという。

 転居した大田区で年金の受給申請を行わなかった理由について、長男は「建築関係のアルバイトを始め、収入が得られたために支給が止まったのだと思った。年金の制度を詳しく知らなかった」と話したといい、07年にはアルバイトを辞めて無職となり、生活保護で暮らしていた。

 同庁に対し、「不明高齢者の問題を報道でみて、母親の死はごまかせないと思った。年金の不正受給はいけないとは思ったが、生活の糧だった」と話しているという。
(2010年8月21日14時47分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100821-OYT1T00444.htm

再び『東京新聞』;

亡母の年金で生活 「104歳」遺体の長男、多額借金

2010年8月22日 朝刊

 東京都大田区で、生きていれば百四歳の三石菊江さんとみられる白骨遺体が見つかった事件で、長男(64)が蒲田署の事情聴取に、三石さんが死亡したとされる二〇〇一年六月以降に受給していた老齢福祉年金について「生活費に使った」と話していることが二十一日、同署への取材で分かった。長男は「多額の借金があった」と話しており、同署は生活の困窮から、三年間で計約百二十万円の年金を不正に受給したとみている。

 同署などによると、長男は新潟県内に住んでいたが、一九九五年ごろ東京都文京区の実家に戻り、三石さんと同居するようになった。長男は新潟にいたころから、複数の消費者金融に借金があったという。文京区に転居した後は無職だったとみられる。長男は「文京区から送られてきた年金の書類を郵便局に持って行き、現金を受け取っていた。いけないことと思っていたが、生活の糧はそれしかなかった」と話しているという。

 また、長男の手帳には、二〇〇一年六月十二日の欄に「母亡くなる」と書かれていたことも、同署の調べで判明。同十四日には「母を押し入れに入れる」と記載されていた。同署は同十二日に三石さんが死亡し、二日後に遺体を押し入れに入れたとみている。手帳には「足痛がっている」と三石さんの病状とみられる記載もあった。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010082202000029.html

世間の反応というか関心というのは年金「不正」受給云々の方向に行っているのだろうか。でも、そういうことはどうでもいいことだ。もっと言えば、そういう関心の持ち方は魂に対して有害である。それよりも、厚生労働省の役人でも警察官でもないのに何故? ということがある。事の成り行きとして、この「長男」はやがて逮捕され・起訴され・裁判にかけられ、しかるべき刑に服す。そういうものだ。
私がこの事件を知って先ず最初に思ったのは、この「長男」は母親の死を看取り、その遺体と同居しながら、自分の死を想像した筈だよねということ。死、最近の流行語でいえば「無縁死」*2。誰にも気づかれずに腐敗し・朽ちていく自分の身体。「長男」は「手帳」に日記らしきものを記していたようだが、記事に引用されている部分だと、自らの心情や内面については書かれていない。私が将来死ぬということを知るのは如何にしてか。他人の死を自分に当て嵌めてそこから類推するという仕方でしかないだろう。多分母親の死から自らの死を類推した「長男」は戦慄しただろうし、それを想像するこちら側も戦慄する。この戦慄に比べれば、「不正」に受給したとかどうとか、まったくどうでもいい話だ。
ところで、年齢差からいうと、「長男」は母親が40歳のときの子どもということになる。この年代の女性の初産年齢としては(今でもそうだろうけど)高いと一瞬思ったのだけれど、上は女子、つまり姉貴ばっかりということなのだろうか。そこら辺の家庭の事情については勿論わからない。