「炭鉱町」(リリー・フランキー)

姜尚中リリー・フランキー「一人ひとりへつながってゆく、母の物語」『青春と読書』407、2006、pp.6-12


曰く、


リリー(前略)
小倉で生まれて福岡の炭鉱町に引っ越したんですけど、炭鉱町にいると何かした全てが差別の対象になっているんですよね。まわりはほとんど炭鉱で働いている人で、それにもかかわらず、町の人間から「坑夫」として差別されるわけじゃないですか。でも今度はその石炭を船で運ぶ人を「人足」として「坑夫」が差別する。そして、その人たちがまた。自分たちが石炭を運ぶために履いているわらじをつくっている人を差別する。つねに誰かが誰かに差別されている状態で、一番のブルジョアジーは学校の先生と国鉄の職員ですから(笑)。
姜 まるっきり熊本もそうです。国鉄に就職するのが勝ち。それと警察官。次男坊や三男坊は自衛隊に行く。自衛隊のお兄さんはほんと優しかった。僕はずいぶんかわいがられましたよ(笑)。
リリー 僕の地元も同級生の多くは自衛隊ですもんね。高校の中頃でだいたい育子とが決まっているような状況でした。
(略)
地元の友達は、自衛隊に入るか、水商売とか、いわゆる会社勤めの人は少ないですよね。(p.7)
また、

リリー 僕が小学校前半の頃に炭鉱が閉山になって、町には失業した人たちが酒屋で角打ちしてるんです。飲み屋じゃなくて、酒屋の周りにひるから呑んでる人がいっぱい居座っていて、僕らを掴まえてイカ買ってこいとか(笑)。それで、なんか意味もなく殴られたりする(笑)。男の人はやっぱ廃れていくんですよ。そういうときは女の人が強い。大らかに「なんも考えてもしょうがなかろうもん」という感じになっていく。だからどんないかついスジモンもお母ちゃんには頭が上がらない。(pp.7-8)
See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20091119/1258596290 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20100326/1269575882