Score(メモ)

日々の非常口 (新潮文庫)

日々の非常口 (新潮文庫)

アーサー・ビナード「数取りの妙」in 『日々の非常口』*1、pp.198-199


曰く、


一人の人間が両手両足を使って数えられる数は一応、二十。それを超える場合は、手持ちの杖か近くの木、あるいは柱にでもちょっと切り込みを入れ、一からまた数え始め、再び二十に達したら、もう一つ切り込めばいい。千年前のノルド語で、そんな印をskorと呼び、それが現代英語のscoreにつながる。スポーツの試合の「得点」や、試験の「成績」、楽譜の「スコア」もみな同語源だ。が、本来は「二十」がsocreの主たる意味だった。
人体の基本単位だからか、その語感には不思議な重みがある。南北戦争時のリンカーン大統領のゲティスバーグ演説は、「八十七年前、我々の祖先がこの大陸に、新しい国を誕生させた」から始まる。しかし、ふつうにeighty-seven years agoといったのでは、様にならない。"Four score and seven years ago"とリンカーンは語り出して、それが名演説となった。(p.198)
仏蘭西語では、80は「四の二十」(quatre-vingts)、81はquatre-vingt-un、90はquatre-vingt-dix。

東京都知事が以前、「フランス語は数を勘定できない言葉だから、国際語として失格しているのも、むべなるかという気もする」と述べたのは、この特異な数え方への批判だっただろうか。ビギナーが面倒臭く思うか、味わい深く思うかはともかく、フランス語の達人たちは自由に指の総数を転がして、勘定している。(p.199)
See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20080114/1200293046