殺人と自殺

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20091027


妙chikirinにしてはまっとうなエントリー(失礼)。
法社会学河合幹雄氏の所説の紹介。日本における殺人を初めとする暴力犯罪の長期的減少傾向について。但し、このことは多くの人が指摘している。例えば、長谷川眞理子長谷川寿一夫妻とか。
にも拘わらず、治安の悪化が云々されるのは、ひとつには治安機関というのが〈不安産業〉であって、そうした不安の増大は自らの予算調達やリストラ回避にとって有利だということがあるだろう*1。そういう治安機関のマーケティングを差し引いて考えると、不安の増大というか〈体感治安〉の悪化は、長期的なトレンドと短期的なトレンドのずれということに関係しているかも知れない。50年のスケールで見て、犯罪が目に見えて減少していても、(例えば)5年のスケールで犯罪が微増しているとすれば、少なからぬ人にとっては、50年前なんか知らないし、或いは記憶も薄れている。それよりは、自分が知っている、或いは記憶もまだ鮮明な最近5年間の方が主観的にはリアルだということはあるのかもしえない。
そもそも殺人が「身内」「近しい関係」の間の出来事だというのは、古典的な探偵小説に親しんだ人には説明も不要なのでは? 基本的に金持ち或いは旧家において遺産相続を巡って殺人事件が起こる。
「自殺の増加は殺人の減少と併せて考えられるかもしれない」ということに関しては、既に宮崎学親分(『殺人率』)が、


a)殺人が多く自殺が少ない社会
b)殺人が少なく自殺が多い社会
c)殺人も自殺も多い社会


というような分類をしている。宮崎親分によれば、a)はフィリピンのような羅典系の社会で、日本はb)に属す。因みに、殺人も自殺も多い社会というのは例えば露西亜。宮崎親分は日本における殺人の少なさこそを批判していたのだが、〈殺人が少なく自殺が多い社会〉は〈殺人が多く自殺が少ない社会〉よりもストレスフルな社会だということは言えるだろう。

殺人率

殺人率