NAEP(メモ)

承前*1

http://d.hatena.ne.jp/kaikai00/20090907/1252286809


「全国学力テスト」を悉皆調査で継続せよという『読売新聞』の社説に対して、どうして「抽出調査」じゃ駄目なのか、「その根拠を教えてもらいたい」と疑問を提示。
さらに、米国のNAEP=the National Assessment of Educational Progressを紹介する池田央氏の「NAEP(全米学力調査)に学ぶ学力調査の技術──測定技術の進歩が未来の学力を提起する──」(『BERD』2005-4)*2を紹介。http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20090831/1251723206でも、「全国学力テスト」は「分量や難易度が毎年異なるため、経年比較できないことは文科省も認めている」ということ(『毎日新聞*3)を紹介しているが、それに関して、池田氏が紹介するNAEPのやり方は興味深いので、メモしておく;


NAEPには「メインNAEP」と「トレンドNAEP」の二つの調査があります。
 メインNAEPは、社会や時代の変化に応じた教育課題に焦点を合わせた学力調査で、問題はその都度変わります(図表1参照)。全米から抽出された公私立学校4、8、12学年の生徒を対象に、読解、数学、理科、作文、合衆国史、公民、地理、芸術といった教科の中からNAGBが調査教科を決め、フレームワークをつくり、その中でそれぞれの専門家が問題を考えます。その時々の社会の要請を反映して、例えば1973〜74年には「生涯設計、職業観の発達」、1986年には「コンピュータ・コンピテンス」が調査対象に取り上げられました。
(図表1は省略)
 トレンドNAEPでは、スペルや四則演算のように、時代の変化にかかわらず不変に求められる基礎学力(スペルや四則演算など)を測定します。9、13、17歳の生徒に対して、数学、理科、読解、作文(ときに公民)の学力調査が行われ、毎回、同様の問題が使われます。継続的な傾向から学力の変化を探る目的なので、「変化を測定するときには測定尺度を変えてはならない」という原則が守られているのです。測るものさしを変えては統計指標の年次変化の比較はできません。つまり、尋ねる質問は同じものか、少なくとも内容的にも答えやすさの点でも同等のものでなければ、以前の結果と比較して学力が上がったか下がったか判断はできないわけです。
 学力の変化を本質的に見るためには、二つの矛盾する要求に応えなければなりません。一つは、年を追うに従って同じ学力の変化の仕方を探ること。その一方で、社会や時代の変化によって、教えられる教科の内容も強調される学力の側面も変化していること。NAEPは2種類の調査を用意することによって、こうした「変化」(メインNAEPが対応)と「連続性」(トレンドNAEPが対応)という互いに矛盾する調査目的の課題を解決しています。調査結果は公開され、一部はインターネットで閲覧可能です。
ひとつの疑問――「全国学力テスト」を強行的に実施しようとした人たちはNAEPを参照したのか(池田氏のこのテクストは2005年に発表されたものである)。