地域とアート(CSF)


☆Cultural Studies Forum (CSF) 6月例会
 都市や地域社会の再編成と現代アートの関連は、その二面性も含め、近年の文化研究でますます注目されてきているテーマであるように思います。今回の例会では、研究者的な視点とアートの現場における実践のそれぞれから御二人の報告者をお招きして、この問題について考えてみたいと思います。

◎日時:6月14日(日) 14:00〜
◎場所: 武蔵大学7号館3階7308(社会学部実習室2)

◎報告
?小泉元宏さん
  (東京芸術大学大学院博士後期課程(日本学術振興会特別研究員DC1)、芸術・文化社会学、文化研究)
 報告題:1990年代以降の「社会と関わりを持つ芸術」活動の増加と地域社会――「芸術祭」「アートプロジェクト」における表現形態の変化に着目して―

?遠藤水城さん(ARCUS Projectディレクターなど)
 報告題:テーマ「<アート>と<地域>と<振興>―アーカスの事例を中心に―」     

◎コメンテーター:佐藤和裕さん(JOBANアートライン柏実行委員会事務局長)
           長尾洋子さん(和光大学

◎報告要旨: 
?小泉報告
 1990年代から、地域参加や地域貢献を前面に打ち出した表現活動やアートプロジェクト(以下、「社会と関わりを持つ芸術」)が世界各国で急増している。地域にアーティストが入り込み、制作プロセスに地域住民を巻き込んで進められるような「協働」の芸術活動や、そのような表現を活用し「芸術による地域活性化」を目指すアートプロジェクト・国際展・芸術祭などが、英国、ドイツ、オランダ、イタリア、韓国、タイなど各地で急増しているのだ。同様の傾向は、近年、日本でも観察することができる。大規模な国際展から、小さなコミュニティを対象とした少数グループによる取り組みまで、「芸術と社会」のあいだの関係性を重視した「社会と関わりを持つ芸術」の急増、つまり「芸術の社会化」が進んでいるのである。
 これらの活動をめぐっては、これまでに文化経済学・都市社会学的な視点から「クリエイティヴシティ(創造都市)論」が提起されて芸術文化活動を取り入れた新たな地域社会形成の重要性が強調される中、その意義が見出されたり、あるいは美学的な観点からは「リレーショナル・アート(関係性の美学)」概念が提示されて、芸術による社会の分断化・個別化への抵抗として捉えられたりして、それぞれの分野において注目を集めてきた。報告者は、これらの議論を踏まえつつも、「芸術」の社会的な編成に注目する文化の社会学の視座により、「社会と関わりを持つ芸術」を捉えなおし、その新たな理解を目指していく。
 小泉さんの経歴については→〈http://jglobal.jst.go.jp/detail.php?JGLOBAL_ID=200901000251851555&t=1&d=1&q=6000013562〉     

?遠藤報告
現在、日本中の様々な地域において「地域振興」を旗印に「アートプロジェクト」が展開されています。その特徴、効果、可能性といってものは、それぞれのプロジェクトがいかに「アート」と「地域」そして「振興」という言葉を捉え、定義づけているかによります。この捉え方のヴァリエーションがそのまま地域系アートプロジェクトのよく言えば多様性を生み、悪く言えばある種の混乱を招いています。本報告では、アーカス・プロジェクトを中心とした報告者自身の体験をもとにアートプロジェクトが地域において果たすべき役割に関して報告します。
 遠藤さんの経歴については→〈http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/api/fellow/4/endo.html〉    
       
◎会場の武蔵大学へのアクセスについては〈http://www.musashi.ac.jp/modules/annai_kouhou/index.php?content_id=9