デブの脱スティグマ化

ROBIN MARANTZ HENIG “Losing the Weight Stigma” http://www.nytimes.com/2008/10/05/magazine/05wwln-idealab-t.html


以前「「デブ」に対する社会的・文化的態度というのはすぐに変わるかも知れない」と書いた*1。米国においてその兆しがあるという話。
一方では、今年の夏にChristopher Dodd上院議員民主党コネティカット州)によって「2008肥満予防法案(Obesity Prevention Act of 2008)」が提案されている。Dodd上院議員によると、肥満というのは医療制度、さらには社会にとって「ハリケーン」級の脅威であるという。
しかし、他方で、反肥満的な政策に対しては、社会運動と医学研究から反論が提出されている。医学研究からの反論としては、先ずオーヴァーウェイトと判定された大人の半数、「肥満」の大人の3分の1は、血圧、コレステロール、トリグリセリド、血糖値がノーマルであり、心臓疾患や糖尿病のリスクも常人と変わらないという研究報告。また、コロンビア大学のRudolph Leibel氏は、そもそも肥満というのは遺伝子レヴェルの決定を受けているので、太っている人間に何故太っているのかと問うのは背の高い人間に何故背が高いのかと訊くのと同様に無意味であるという。
さらに、記事では「デブ受容(Fat Acceptance)」運動が紹介されている。この人たちはQUEERがポジティヴな意味に使われているように、「デブ(fat)」という言葉をポジティヴな意味に転用する。その主張は”it’s possible to be healthy no matter how fat you are and that weight loss as a goal is futile, unnecessary and counterproductive — and that fatness is nobody’s business but your own”というものである。「私たち自身と私たちの素晴らしいサイズの受容(acceptance of ourselves and our wonderful sizes)」、「目標としての減量の拒否(rejection of weight loss as a goal)」。「デブ受容」に関わり、 Health at Every Sizeという著書を出したカリフォルニア大学デイヴィス校の栄養学者Linda Baconさんは”intuitive eating”を提唱する。つまり、腹が減ったら素直に食べる、但し「ジャンク」は避けろということである。また、エクセサイズは勧めるけれど、それは精神的・身体的な利得のためであり、「減量の手段」ではない。さらに重要なのは、風呂場の体重計を気にすることを止めて、体重がどうであれ、自分の身体を慈しむよう、セルフ・イメージを変えることを勧めていること。Baconさんによれば、長期的にはこのアプローチの方が例えば血圧やコレステロールの低下には効果があるのだという。また、「デブ受容」の人たちは、デブが心臓疾患や糖尿病や癌に結び付けられていることについて、疫学研究においても貧困、マイノリティであること、ファスト・フードの過剰摂取、座りっぱなしのライフスタイル、医療保険へのアクセスの欠如等の「体重とは関係ない因子」が屡々無視されていると批判している。