野原さん曰く、「いま生きていることはどんな場合も「偽りの生」である」と*1。仏教徒でありながら現世に執着する私としては、私が自らの身体や脳で関わってきた(いる)生*2が、いくらそれらが情けなくて、或いは欺瞞に充ちたものであったとしても、「偽りの生」だとはいいたくない気がする。寧ろ、そういうのを引っくるめて、本当の生だと言ってしまいたい。ただ、嘘も何も全部引っくるめて肯定して・引き受けるRosewater的な仕方もあるのだが、そのような強者ではありえない。因みに、どんな生でも自分だけが関わっているのではなく、誰かしらの他者とともにある。
ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを (ハヤカワ文庫 SF 464)
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と述べられている。「多重人格」という言葉を読んで、一瞬違和感を感じたということはあるのだが、よく考えてみれば、「多重人格」というのはウィリアム・ジェームズも考察しており(ここでは『心理学』と『宗教生活の諸相』の前半をマークしておく)、張江さんが「多重人格」という言葉を使うとすれば、ジェームズ→シュッツという線で思考されていると推測できる。
ところで、「インターネットと多重人格」とを関連づける想定は、まぁ、旧いといえば旧い話題ではあるが、やはりかなり本質的な関係があるとみたほうがよいようにおもう。
とはいえ、「私」の多重性は、近代人よろしく、今もなお、本人の自己像の範囲内では、秘匿的にのみ現出している。
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*1:http://d.hatena.ne.jp/noharra/20080824#p3
*2:この場合の「生」は英訳するとしたら、livesと複数形にすべきである。
*3:See http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20050716 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20051214 http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20070515/1179237549