古代ユダヤ王国の首都は日本の四国にあったのか、とか

承前*1

拙blogには、ハンナ・アレントエドムント・フッサールアルフレート・シュッツジャック・デリダという名前がかなりの頻度で登場するわけで、それだけで或る人々からすると、〈ユダヤの手先〉認定ということになってしまうのだろうか。
さて、http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-558.htmlで、「世に言う地球温暖化問題は、原発産業をも独占する、ユダヤ権力によるただのプロパガンダである可能性が極めて高い」という「陰謀理論」が紹介されている。たしかに、「地球温暖化問題」を原発を推進したい人が利用しているという面はあるのだろう。「ユダヤ権力」という用語それ自体が問題なのだが、では〈京都議定書〉問題にしても、「ユダヤ権力」に忠実であるとされている米国のブッシュ政権が「地球温暖化問題」に不熱心なのは何故なのか。そのサンプルとして引用されている人は、


ユダヤとかって聞いただけで短絡的にレイシズムに直結しちゃう賢い風味の駄菓子みたいな脳みそは、「ユダヤ的思考」っていうものの見方もできない「人種」に囚われる記号主義の自縛思考。
だからご立派と言っている
ハァァァァァァ。。。

挙句に、ヘッジファンドとか、サブプライムとか
なんだかおんなじようなやつが、うろ虚空洞(ウロウロウロウロ)してますねぇ
シェークスピアにまで揶揄されるベネッツィアのシャイロック
自らそのように振舞い、「他人の血肉に糧を得る」金融資本主義。
歴史の中で蔑まれ様がまったくもってお構いなし
http://interceptor.blog13.fc2.com/blog-entry-1481.html

と書いている。
先ず、「レイシズム」の辞書的定義を引用しておく――”a belief that race is the primary determinant of human traits and capacities and that racial differences produce an inherent superiority of a particular race”*2。一目で頭が悪そうだと判断できる文体であって、多分この人は「 ユダヤ的思考」という言葉を使いながら、フロイトベンヤミンレヴィナスも読んだことがなさそうなわけだが、「ヘッジファンドとか、サブプライムとか」と、全く別のオーダーに属する事柄を平気で並列していることからも、この人に思考能力があまりないということは推論できるだろう。これはたんなるかましい馬鹿ということで、その意味で害は少ないのかもしれない。
しかしながら、理路整然とトンデモを述べている人もいる。例えば、

陰謀論などと言われようが、この300年間の世界を牛耳って来たのは明らかにユダヤ権力である。20年前であれば「ユダヤ」などと言うことは極めて危険であるとされてきた。しかし911以降、インターネットの世界では内部犯行説が益々、真実であることが多くの人々に認識され、如何にユダヤ権力がこの世界を陵辱してきたかが理解されてきている。1985年に宇野正美氏が「ユダヤが解ると世界が見えてくる」という本を出されましたが、逆に今、言えるのは「ユダヤが解らないと世界は絶対に見えない」ということだと思います。ユダヤが解らずして日本の歴史、明治維新日露戦争も太平洋戦争も解りません。バブル崩壊911サブプライムローン原油高もなにもわかりません。陰謀論なんて言うのは勝手ですが、ユダヤの視点抜きに世界の真相を語ることは絶対にできません。世界はシンプルです。それを複雑に見せているのは真相を覆う学者や評論家のせいです。おそらくその成長過程で認識した世界の見方を変えることができない人たちが「陰謀論」などというレッテルを貼るのではないでしょうか?

彼らには一定のパターンがある。あらゆる国々、あらゆる組織に肩入れし、それらを闘わせることによって戦争を起こし、巨富を得るというパターンである。株の操作と戦争は表裏一体のものである。「バブル崩壊」などというものは決して物理現象などではなく、その本質は彼らによる日本の富の収奪であったのだ。森→小泉→安倍→福田という清和会の流れは、彼らの意図を汲んだ売国政治がその実態だったのであり、構造改革とは中流下流におしやり、その奪った富をアメリカに差し出すものであったのだ。
http://henrryd6.blog24.fc2.com/blog-entry-357.html

ユダヤ権力」というならその具体的な機構を提示してもらいたいものだと思う。それはさておき、「ユダヤ権力」というのは記号論的にいえば、〈零記号〉といえるだろう。何も意味しないが故に何でも意味する。純粋に近いシニフィアン。これについては、レヴィ=ストロースのマルセル・モース論文集への序文を参照されたいが、「陰謀論なんて言うのは勝手ですが、ユダヤの視点抜きに世界の真相を語ることは絶対にできません」と超お手軽に世界の複雑性が縮減されてしまう。つまり、この手の人は世界の複雑性に耐えられない知的な弱者であるともいえる。大体、「ユダヤ」を持ち出せば何でもわかるなら、歴史学も経済学も不要ではないか。また、以前書いたかも知れないが*3、このような仕草が基本的にマッチョな仕草であることはいうまでもない。それも男性としての欲望を充足している男性ではなく、〈非モテ〉の妄想。
社会学と人類学 (1)

社会学と人類学 (1)

先をちょっと引用してみよう。

アメリカにおける2大政党制において裏で操作しているのはユダヤ権力である。彼らはどちらが勝っても困らない。歴代の大統領は全てユダヤ権力の息がかかっていたのであり、そもそも共和党民主党ともに彼らの息がかかっている人間だけが大統領予備選の候補たり得るのだ。大統領予備選というのは民主主義という幻想を国民に植え付けるためのものでしかないのである。ブッシュもクリントンもヒラリーも隠れユダヤなのだ。
米国では1950年代辺りまでは、ユダヤ人は差別のために大学教授になるのも難しくて、その副産物として、所謂紐育知識人というのが形成されたということはあるのだが、それはさておき、この論理は凄い。自分が気に入らないのは全て「ユダヤ」になってしまう。誰もがユダヤ人! これは或る意味で正しいのかもしれない。何故なら、近代社会というのは資本主義化によって、誰もが〈ユダヤ人〉たらざるをえなくなってしまった社会であるからだ。Marked/UnmarkedからMarketへ*4 。中世における宗教としてのユダヤ教迫害とは区別される反ユダヤ主義の根拠のひとつがここにあることはたしかだろう。
さて、みなちゃまの尊敬されている宇野正美ちぇんちぇーによると、古代ユダヤ王国の首都は日本の四国の徳島にあったらしい*5。それなのに、何故「ユダヤ権力」は日本を苛めるのでしょうか。