「モラル崩壊」ではなく

http://d.hatena.ne.jp/sunafukin99/20071031/1193787148


これに関しては、先ず森真一氏の『自己コントロールの檻』や『日本はなぜ諍いの多い国になったのか』*1が参照されるべきだろうか。

自己コントロールの檻 (講談社選書メチエ)

自己コントロールの檻 (講談社選書メチエ)

いい加減にコメントしてみると、人々の「モラル」が「崩壊」しているように見えたり、逆に「社会の倫理基準が厳しくなりつつある」ように見えたりするのは、お気楽な社会生活の前提である自明なものとしてのcommonsenseへの信頼が弱くなっている(困難になっている)ということがあるのかも知れない。勿論、それはつい最近始まったわけではなく、近代というのはそういう時代なのだろう。付け加えれば、再帰的近代化というのはあくまでも近代のラディカル化であり、近代を超えたりしているわけではなく、近代がより近代になっているということなのである。
特に他人に厳しいというのも納得できる。自らの〈正しさ〉をポジティヴに主張するのは難しい。しかし、〈正しくないもの〉を叩いておけば、取り敢えず〈正しくない〉の否定形として(否定の否定!?)自らの〈正しさ〉は暫定的に確保できそうな気がする。他者を貶めることによって、自らの〈正しさ〉が取り敢えず確証されるというのはニーチェ(『道徳の系譜』)でいうところの「奴隷道徳」の特徴であろうか。

道徳の系譜 (岩波文庫)

道徳の系譜 (岩波文庫)

See also http://d.hatena.ne.jp/sumita-m/20060803/1154625015