何故妹が?

先ず、渋谷区*1短大生殺害事件の記事を2つクリップしておく;


「受験生のくせに」に逆上=殺害前、妹と言い争い−短大生遺体切断・警視庁

1月10日5時30分配信 時事通信

 東京都渋谷区の歯科医宅で長女の短大生武藤亜澄さん(20)の切断遺体が見つかった事件で、死体損壊容疑で逮捕された二男の予備校生勇貴容疑者(21)が、殺害に至る直前、「妹に『受験生のくせに』と言われた」と供述していることが10日、警視庁捜査1課と代々木署の調べで分かった。亜澄さんに対しては、外泊を繰り返す生活態度や親への言葉遣いが不満だったと話しているという。
 同課などは、受験に3度失敗し、私大歯学部への進学で苦しむ中、不仲になっていた亜澄さんに最も触れられたくない部分を指摘され、勇貴容疑者が逆上したとみて、さらに動機の解明を進める。
 勇貴容疑者は昨年12月30日、2階居間でテレビを見ていた亜澄さんに「『勉強しないから夢がかなわない』となじられ、頭にきて殺した」と供述していた。
 その後の調べで、2人が言い争いになったことが新たに判明。その中で、勇貴容疑者は亜澄さんから「『(親に迷惑を掛けている)受験生のくせに』と言われた」と話しているという。 


最終更新:1月10日5時30分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070110-00000015-jij-soci


殺害短大生、生活態度巡り事件前に両親がしっ責

1月9日3時4分配信 読売新聞

 東京都渋谷区の歯科医師武藤衛さん(62)宅で、長女の短大生亜澄さん(20)の切断された遺体が見つかった事件で、亜澄さんが事件前、家庭での言葉遣いや態度について、両親に厳しくしっ責されていたことが分かった。

 警視庁捜査1課は、二男の予備校生、勇貴容疑者(21)(死体損壊容疑で逮捕)が事件を起こした背景に、こうした亜澄さんと他の家族との軋轢(あつれき)があったとみて調べている。

 同課や関係者によると、亜澄さんが短大に通いながらタレントを目指していたことについて、両親は容認していた。しかし、事件直前、亜澄さんの家庭内での態度や言葉遣いを巡り、両親が「なぜ親や兄たちの立場をもっと考えられないのか」などとしかり、言い争いになったという。


最終更新:1月9日3時4分
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070109-00000201-yom-soci 

それから、http://blog.goo.ne.jp/hosakanobuto/e/5c374b802464aaca53951c67aecf574bにこの事件についての意見が纏められている。
家庭内での居辛さを感じた浪人生が騒動を起こす。死体処理の猟奇性を差し引けば、今回の事件はそう奇異なものでもないかも知れない。若い人の社会的地位は学校に入るか会社に入るかによって確保されるということになっているようだから。浪人生はそのどちらでもないので、社会(さらには家庭)における居場所も不安定になるということだ。ところで、疑問に思っていたのは、何故「勇貴容疑者」の暴力が親に向かわずに、妹がターゲットにされたのかということだ。短期的に考えれば、妹の発言にキレたということなのだろうけど、上の記事からも推測されるように、もっと長期的というか家族の構造に関わる要因も考えられるのではないか。先ず思いつくのは、この家族の中で妹だけが〈歯医者〉という属性から自由だったということだ*2。それに対して、「勇貴容疑者」は〈歯医者〉という属性への同化を望んでいるにも拘わらず、学力の問題のためにそれができないでいる。その不満から来る暴力衝動は〈歯医者〉という属性を(家庭内で)体現しているであろう親には向かわず、それから降りてしまった妹に向けられるということになるのか。親を殺してしまえば、自らが同化を望んでいたものを破壊してしまうことに繋がる。
中産階級の家庭内で疎外感を持つ子女がパンク・ロッカーを目指すというのはありそうな話だとは思うが、この場合、そういう選択肢はそもそも思いつかれなかったわけだ。

*1:私の感覚では寧ろ新宿に属すると思う

*2:というよりも、距離を保ち得ていたという方が適切か。