「国営」の「お見合い」?

『朝日』の記事なり;


少子化対策「お見合い国営で」 猪口担当相
2006年05月19日06時59分

 猪口少子化担当相が、政府の責任で「お見合いパーティー」など、独身男女の出会いの場を設ける案を閣内で打診していたことがわかった。非婚や晩婚が少子化の一因と言われるため、政府がキューピッド役をしようという発想だ。政府・与党内には「出産前の対策も重要だ」という意見もある一方で、閣僚からは効果が見込みにくいという声も出ている。

 すでに一部の県や市町村は「お見合いパーティー」の主催や民間事業の支援に乗り出している。猪口氏は一部の地方自治体との対話で、こうした取り組みに国も参加するよう求められていた。政府・与党が歳出歳入一体改革を進めているため、大幅な支出を伴う少子化対策を講じにくいという事情もある。

 出生率が日本を下回る1.24(04年)のシンガポールでは、結婚奨励を国家事業と位置づけ、大卒者を対象に国営の「お見合いセンター」がパーティーを頻繁に開いている。ただ、結婚しても経済的事情などから出産しないカップルも多く、効果を疑問視する声があるようだ。
http://www.asahi.com/life/update/0519/001.html#2006

「どうして若いもんが結婚する気になれないのか、どうして今の既婚者がどんどん子どもを作らないのか、ほっといても結婚したくなる、子どもを生もうと思えるシステム(雇用の安定とかセーフティーネットの整備とか教育費の負担減とか過重労働そのものをなんとかする方策を考えるとか…)を構築すべきなのに、小手先だけの表面上の支援でその場をなんとかのりきることしか考えていないように見える」という批判*1は真っ当だと思う。
それはともかくとして、この発想は、「非婚」「晩婚」が多いのは〈出会い〉のチャンスが少ない(さらにいえば、昔よりも減ってきている)という認識を前提にしているといえるだろう。しかし、はたして、そうなのか。以前にも書いたのだが、昔に比べれば性行為への敷居は相対的に低くなっているわけだし、学校や職場のジェンダー・フリー化も少しは進んでいる。つまり、工学部に入学する女性や看護学校に入学する男性の比率は増えている*2。また、「ツヴァイ」などの民間のお見合い産業も以前より充実しているといえるだろう。総じて、男女の出会いのチャンスは相対的に増えているといえるのではないだろうか。だから、問題は出会いのチャンスは増えているのにも拘わらず、何故?ということであり、猪口氏さんの思いつきはその基本を外しているのではないかと思うのだが、如何?
少子化」ということで、

少子化対策に100のラブストーリー 奈良県発案で出版


 少子化に悩む奈良県が募った恋人たちの出会いのエピソードが、「出会いのラブ・ストーリー」(ぜんにち出版)のタイトルで出版された。

 タクシーと勘違いして飛び乗った車のドライバーとの運命の出会いや、間違いメールがもとのネット恋愛など全国から寄せられた100のエピソードを紹介。

 「幸せな出会いで、結婚を」と県こども家庭課が発案した。最終ページには余白があり、「自分自身の出会いの物語を書き込んで」と担当者。税込み1365円。
http://book.asahi.com/news/OSK200605190045.html

という記事もあった。「少子化対策」に役立つかどうかはともかくとして、もしかしたら印税収入で奈良県の財政が少しは潤うかも知れないという効果はあるのだろう。

*1:http://d.hatena.ne.jp/kmizusawa/200605

*2:昔は、社会学部は、その女子学生比率の高さのために、それだけで、経済学部や法学部から羨ましがれたものだ。