少子化の原因(山田昌弘)

山田昌弘*1「私の社会保障論 教育費心配ない施策を」http://mainichi.jp/articles/20151223/ddm/004/070/013000c


曰く、


政府は、少子化対策を本格化させ、合計特殊出生率1・8への回復を目指すという。意気込みは評価するが、肝心の施策内容を見ていると、保育園充実など従来の施策の延長に過ぎず、効果は薄いのではないかと思う。なぜなら、少子化の背後にある「若い人の願い」に応えていないからである。その願いとは「子どもに自分がしてもらった以上のことをしてやりたい」というものである。それが無理と思えば、予定する子どもの数を減らしたり、結婚を控えたりする。これが日本の少子化の本当の原因だと考えている。

未婚者を調査している中で、ある程度の収入の男性とでなければ結婚しないという女性に出会った。その理由を聞くと「私は小さい頃、習い事をさせてもらい、短大まで出してもらった。私は貧しい生活でも構わないが、子どもにはお金がないからできない、ということは絶対に言いたくない。だから、収入が低い男性とは結婚しない」というものだった。未婚男性からも「俺の収入で結婚したら、妻子がかわいそう」という話を聞いた。

 学生に聞いても「将来の収入を考えると、何人もの子どもの大学費用を負担する自信がない。子ども1人が精いっぱい」という声が多かった。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査でも、既婚女性が理想の子どもの数を産めない理由の、不動の1位は「子育てや教育にお金がかかりすぎるから」なのだ。これを専門的にいえば「子どもの下降移動リスクを回避したい」ということである。

少子化を本気で阻止したいなら大学教育を原則的に無料化しろというのはそれほどトンデモなわけでもないことになる*2。勿論山田氏の主張は、よくいえば中庸で確実、悪くいえば生温いものなのだが――「3人目以上の子どもの学費を無料にするなど、何人産んでも子どもの高等教育費を心配しないで済む施策が必要とされているのだ」。