少子化の「加速」(中国)

岡村崇*1「そこが聞きたい 中国の少子化 加速へ」『毎日新聞』2019年11月3日


小浜正子さん*2へのインタヴュー。
抜書きしてみる;


一人っ子政策導入後に出産した経験がある女性たちに聞き取り調査したことがあります。やはり、子どもを1人に制限されたことへの反発はありました。「近代化の足かせとなる人口増を抑制するため」と繰り返した政府の宣伝活動を受け入れざるを得なかった女性には「国家のために私たちの世代が犠牲になった」と強く感じている人もいました。厳しく子供の数が制限されたことで、中国社会のジェンダー構造は大きく変わりました。都市部で生まれた女の子は、男の子と同様に大切に育てられるようになって地位が向上した一方、農村部では、女の子を妊娠したとわかれば中絶したり、戸籍のない「闇っ子」*3にしたりするケースが後を絶ちませんでした。教育機会も限られるなど女の子への差別や虐待も横行しました。このため、一人っ子政策導入後に生まれた世代は、男性の割合が異常に高くなっています*4
独子政策撤回後;
\
夫婦が子どもを2人持てることになり、一部の農村部ではベビーブームが起きました。しかし、国内全体としては政府が期待したほどに出生率が上がっていません。都市部では高騰する子どもの教育費などを理由に2人目の出産に踏み切れない夫婦が多いし、農村部でも「一人っ子でも別にかまわない」という選択をする夫婦も増えているからです。(略)日本を含む東アジアは今や、世界でもっとも出生率の低い地域です。一人っ子政策自体は特殊な政策でしたが、そのたがを外した中国は特別な存在ではありません。「想定を超えるスピードの少子化に直面している」という点で、東アジアのほかの国々と課題を共にしていると捉えた方が良いでしょう。

東アジアでは、欧米に比べて婚外子の出生が極端に少ないなど家族規範が強いことが少子化と関連していると指摘されています。中国は特にこの傾向が強い。経済の急速な発展に伴って、日本以上に格差が広がったため、社会での競争が激しく、子どもを育てることに対するプレッシャーも強いです。人口の男女比率が違うことで生じた男性の結婚難や晩婚化という要素もあるので、中国社会の少子化は今後、加速度的に進むでしょう。現時点で中国は有効な少子化対策を打ち出せていません。しかし、「二人っ子政策」になった現在でも、国家が子どもの数を決めるという方針は変わっていない。むしろ必ず2人産むようにさせろという意見も一部で出ていますが、人びとの感覚とは距離があるので実現は難しいでしょう。(後略)
ところで、中国の人口問題の基本については、若林敬子先生の『中国 人口超大国のゆくえ』以来、私の知識はあまりアップデイトされていないのだった。
中国人口超大国のゆくえ (岩波新書)

中国人口超大国のゆくえ (岩波新書)