教育機能?


ここで引用されている写真。中国広東省で撮影されたもので、宋偉帆という少年が、中国の大学入試のための統一試験である高考で、広東省文系1位の得点を挙げ(「文科状元」)、北京大学に合格したのを「熱烈祝賀」する、オープン・カーによるパレード。
これを主催しているのは「扶柳宋氏理事会」という宗族団体。中国社会に毛細血管のように張り巡らされた党・国家の権力系統とは別の組織によるものである。この宋偉帆君も「扶柳宋氏」の一因なのであろう。新嘉坡などの華人社会では〈▽氏宗親会〉というような宗族団体の事務所をよく見かける。しかし、肝心の中国大陸では宗族組織の活動というのは殆ど見たことがなかった。それには、中華人民共和国建国以来の政治的歴史が関連している。中国共産党の土地改革(土改)は宗族が活動していくための経済的基盤を破壊してしまった。宗族というのは殆ど全ての血縁組織と同様に、存続していくことがその目的だといえるのだろうけど、幾つかの存在理由というか重要な社会的機能は有していた。それは何よりも先祖祭祀と教育であろう。宗族の日常的な先祖祭祀活動は祀堂という建物で行われ、歴代の宗族メンバー全ての位牌が祀られていた。また宗族はその子弟向けの塾を開設していた。宗族から科挙合格者(官僚)を輩出することは実利的なメリットがあるだけではなく、他の宗族(姓)との差異化でもある。ところで、日本でも、慶應義塾とか東奥義塾とか、私立の学校の名称に「義塾」という言葉が使われるけれど、これは元々中国の宗族の私塾のことであり、江戸時代の間にその言葉が日本に伝えられていたのだろうけど、どのような経緯で(例えば)福澤諭吉などが「義塾」という言葉をチョイスしたのかはわからない。
疑問に思ったのは、現代の宗族はどのような経済的な基盤で活動しているのかということ。また、かつての宗族では子弟の教育が重要な機能だったわけだけど、現代において、「熱烈祝賀」するだけではなく、日常的にどのような教育に関する活動をしているのか。例えば、宗族の子女のために学習塾*1を開設したりしているのだろうか?
なお、宗族自治の機能については、例えば上田信『伝統中国』*2を参照されたい。